ビタミンEが心不全リスクを増大
ビタミンEは癌や心血管疾患の予防に有用ではないばかりか、心不全のリスクを増大させることが、米国医師会雑誌「JAMA」3月16日号掲載の研究で明らかになった。心血管疾患または糖尿病の罹患歴のある高齢者数千人を対象とした試験で、ビタミンE摂取(400単位)群の方がプラセボ(偽薬)投与群よりも心不全リスクが最大19%高いことが示された。
マクマスター大学(カナダ・ハミルトン)集団健康調査研究所内科教授のEva Lonn博士らは、1993年12月〜1999年4月にかけて実施されたHOPEと呼ばれる試験の終了後、1999年4月〜2003年3月にかけて、同試験の参加者から約4,000例を登録させ、HOPE-TOO試験を実施した。さらに、試験対象外の患者の医療記録からも追跡情報を多数評価した。
その結果、ビタミンE摂取群の方がプラセボ投与群に比べ心不全リスクが13%高く、入院を必要とする心不全リスクは19%高かった。Lonn博士によれば、リスクが高まる機序は明らかではないが、酸化ストレスの存在下では、ビタミンEが抗酸化物質としてではなく酸化促進物質として作用するのではないかと推測している。
今回の試験結果について、Lonn博士は、ビタミンEを摂取している人すべてが懸念する必要はなく、ビタミン剤などの健康補助食品さえ摂取していれば、十分な運動をして適切な食生活を送るなど、癌や心疾患を予防するための他の手段を講じる必要がないと考える人が多いことに問題があると指摘する。
一方、健康食品業界を代表する米国栄養評議会(CRN)会長のAnnette Dickinson氏は、今回の試験が重篤な疾患に罹患し種々の投薬を受けている高齢者を対象としたものである点を指摘。「ビタミンEが数種の癌、眼疾患およびアルツハイマー病などの神経系症状に有益性を示す試験が多数報告されている」と述べるとともに、「健常者であれば、1日あたり400単位のビタミンE摂取は安全である」との考えを示している。