アブラナ科の野菜は癌(がん)との闘いに有効
ブロッコリーやキャベツなど、グルコシノレートという成分を豊富に含むアブラナ科の野菜がさまざまな抗癌(がん)作用を示すことはこれまで多く報告されているが、それを裏付けるような複数の報告が、米ボルチモアで開催された米国癌学会(AACR)癌予防研究フロンティア会議で発表された。
筑波大学人間総合科学研究科の谷中昭典博士らの研究では、20人の被験者中、ブロッコリー・スプラウト(ブロッコリーの新芽)を多く摂取している人は、ピロリ菌(Helicobacter pylori)への感染が有意に低いことがわかった。ピロリ菌は胃炎(胃の内壁の炎症)を起こす細菌で、消化性潰瘍や胃癌の主要な原因となる。今回、ピロリ菌を全滅させるまではいかないが、ブロッコリー・スプラウトを多く食べるというごく簡単な方法でピロリ菌を抑制し、それに伴う胃炎を軽減できることがわかったのは、ピロリ菌保菌者への朗報だという。
酸化性物質(オキシダント)はDNAを傷つけ細胞を殺し潜在的に癌をもたらす有毒分子であるが、ブロッコリー・スプラウトに含まれるスルフォラファンという成分が、酸化性物質に対する細胞の防御作用を助けるという。スルフォラファンは、グルコシノレートの分解産物イソチオシアネート(イオウ化合物の一種)の一つで、ブロッコリーに特有の成分であり、新芽には特に豊富に含まれる。
米ジョンスホプキンス大学(メリーランド州)からの報告は、紫外線照射したマウスの皮膚に照射直後ブロッコリー・スプラウト抽出液を塗ったところ、皮膚癌発生率が非塗布群で100%に対し、塗布群では50%だったというもの。研究チームは現在、皮膚への塗布だけでなく、経口摂取した場合のマウスでの効果を調べており、将来ヒトに応用して、スルフォラファンを服用または肌に塗るような皮膚癌予防薬の開発につながると期待している。
米ミシガン州立大学のチームからは、キャベツやザワークラウト(塩漬けキャベツ)を多く食べる女性で乳癌リスクが低いというデータが発表された。思春期に多量にキャベツを食べ始め、生か調理時間が短い場合に予防効果が最も高いという。キャベツに含まれるグルコシノレートの分解産物が、発癌過程や癌の促進過程を阻止すると考えられるという。
この学会では、イチョウ葉エキスに含まれるギンコリドAとギンコリドBという成分が卵巣癌リスクを低下するという報告や、ニンニクに含まれる硫化ジアリル(DAS)が、高熱で調理された肉や卵から生じる発癌物質の作用を阻害するという報告もなされた。