妊娠期間中のビタミンD値が小児の骨量に影響
妊娠期間中のビタミンD補充により、生まれた子供が後年に骨粗鬆(しょう)症になるのが予防される――。英医学誌「Lancet」1月7日号に報告された研究結果では、妊娠後期にビタミンDの補充が不十分な母体から生まれた児の9歳時での骨量を測定したところ、骨が脆弱(ぜいじゃく)であることが判明した。
研究者の関節疾患専門病院(Hospital for Joint Diseases:ニューヨーク)骨粗鬆症センター長のStephen Honig博士は「今回の研究結果は、妊娠期間から始まる種々の状態が最終的な骨の健康状態および強度に影響を及ぼすことを示唆するものである」とした上で、「ビタミンD補充は改善が容易で、経済的負担または副作用という観点からも特に問題が生じることはない方法である」との見解を示している。
これまで、妊娠期間における母体のビタミンDレベルと、出生児の骨格成長との間にみる関係に焦点を当てて検討されたことはなかった。Honig博士らは、1991年および1992年に英サウサンプトンの病院で出生した小児198例を対象に、妊娠期間の母体の体格、栄養状態およびビタミンD値を評価し、児の9歳時の体格および骨量を測定した。
その結果、妊娠後期にビタミンD値が低かった女性は、児の9歳時の骨塩量が低いことがわかった。ビタミンDを補充して日光曝露が比較的多かった女性では、ビタミンD欠乏症となった割合は低かった。臍帯(さいたい)血中のカルシウム低値も骨量の低下に影響していた。この所見は、低体重出生など生後すぐに認められる種々の問題が、後年の骨粗鬆症の発症リスクに影響を及ぼす可能性があることを示すいくつかの研究結果と一致する。
骨の成長に関して、閉経後に生じる疾患としてのみではなく、妊娠時での状態が後年大きな影響を与えることを知っておく必要がある、とHonig氏は指摘する。
ビタミンDは、骨成長に不可欠なカルシウムの吸収を最適なレベルで維持するために必要な栄養素である。ビタミンDは主に日光を浴びることによって得られるが、ほとんどの人がその量が不十分である。米ニューヨーク大学医学部臨床準教授のLoren Wissner Greene博士は、今回の研究結果はきわめて興味深く、かつ示唆に富むものであるとし、「米国では最近多くの人が日焼け止めを用いることによってビタミンD不足に陥っている」点を指摘する。
Honig博士は、日光量の少ない冬場に妊娠後期が重なる場合には、児の骨を強化するためにもビタミンDの補充を勧めている。