就学前の幼児にも睡眠障害
睡眠問題がティーンエイジャーや成人を悩ませることは広く知られているが、幼児も十分な睡眠が取れていないらしい。
米ブラウン大学医学部(ロード・アイランド州)助教授のChristine Acebo博士らは、1〜5歳の幼児169人の睡眠時間を調査した。各家庭を訪問し、子供の手首または足首に就寝時刻がわかる「アクティグラフ」というモニターを装着してもらい、母親には子供の睡眠習慣についての日記をつけてもらった。1週間後に再訪問し、日記と活動記録を含むアクティグラフを回収した。この研究は、幼児の睡眠量をアンケートでなく客観的に計測した初めてのものだという。
1〜5歳の幼児では1日約12〜15時間の睡眠が推奨されているが、結果は、3〜5歳児では昼寝時間も含めて9.5時間未満しか睡眠時間を取れておらず、1〜2歳児では10.5〜11時間だった。
また、収入の低い家庭の子供ほど夜ベッドで長く過ごしていたが、高収入家庭の子供よりも睡眠時遊行症(夢遊病)が多く、就寝時刻にもばらつきが多かった。この結果は、米医学誌「Sleep」12月号に掲載された。
過去の研究では、もっと年長の子供やティーンエイジャー、成人で、睡眠不足が運動能力の減少、学業の低下その他の生理的、認知的問題につながることが示されている。成人の睡眠不足が、過食や肥満につながる「神経内分泌異常」に関連するという報告もある。これらの問題がそのまま幼児に当てはめられるかどうかは不明だが、Acebo博士は、睡眠不足という問題が、家族の最年少のメンバーにまで拡大していることが心配されるという。
ただし幼児に必要な睡眠時間はまだきちんと調べられておらず、12〜15時間というのが経験に基づく推定値にすぎないこともAcebo博士は認めている。
米Children’s Memorial Hospital(イリノイ州)のIrwin Benuck博士は、子供が十分な睡眠を取れているかどうかは、日中の活動をみるべきだという。5歳児の睡眠が8.5時間でも、1日を楽しく過ごし、幼稚園に行って活動に参加し、不機嫌にもならず眠そうでもなければ、それでよいという。しかし、もし子供が日中不機嫌でちゃんと活動できていない場合は、夜の様子を調べるべきだという。睡眠中に動き回り、いびきをかくなら、小児科医に相談するようBenuck博士は助言している。例えば、扁桃腺肥大で、これを除去すれば睡眠の質が向上することもあるという。