喘息患者は他の慢性疾患も抱えやすい
喘息患者は、心疾患や脳卒中、骨粗鬆(しょう)症、関節炎、癌(がん)などの慢性疾患を合わせてもつ率が2倍という報告が、米医学誌「Chest」2月号に掲載された。喘息の症状には、喘鳴(ぜんめい)、咳、胸部圧迫感、息切れなどがあり、米国には約1,500万人の喘息患者がいる。
今回の研究は、オーストラリア、アデレード大学医学部のRichard Ruffin博士らがオーストラリアの3つの州からランダム(無作為)に抽出された約7,600人に電話インタビューを行なったもので、うち834人が喘息と医師に診断されていると回答した。
これら喘息患者は、喘息以外の慢性疾患を抱える率が喘息でない人より90%高かった。脳卒中リスクは2.5倍、心疾患は2.2倍で、関節炎は80%、骨粗鬆症は70%、癌は50%、糖尿病は20%高かった。年齢別では、55歳以上で他の慢性疾患のあるリスクが最も顕著だった。
ただし、この研究には限界もある。喘息患者は治療のため定期的に医師の診察を受けるので、他の慢性疾患と診断される率が高いだけかもしれない。また、喘息の重症度は調べられておらず、喘息が重症であるほど他の疾患をもつ率が高いかどうかは不明。喘息と他の疾患に因果関係があるのか単に共存しているだけなのか、喘息がうまくコントロールされている場合には疾患リスクが減少するかどうかの点も不明である。
慢性疾患が共存する理由としては、米ニューヨーク大学メディカルセンター、アレルギー喘息臨床部長のJonathan Field博士によると、喘息がコントロールできていないときに用いられる経口ステロイド薬やその他喘息治療薬が、骨や血糖値に影響を及ぼしたり、免疫系を弱めたりするせいとも考えられるという。喘息患者は運動せず座ってばかりの生活になりがちだが、これが心疾患リスクを高めるともいう。
他の専門家からは、この研究では対象が現在喫煙中かどうか、喫煙歴があるかの点を考慮していない点や、喘息の診断が自己申告によるもので、医師により別個に確認されていない点などの不備を指摘する声もある。喫煙に心疾患、脳卒中、癌との関連性があるのは明らかだし、喘息だと答えた人が実は肺気腫であるかもしれないという。