中年期の集中力低下は脳機能の変化のせい
中年になると、なぜ以前ほど集中できないのかと不思議に思うようになる。米医学誌「Journal of Cognitive Neuroscience」2月号に掲載されたカナダの研究によると、中年期に始まる脳の変化が原因で、高齢者は無関係な情報に気を取られ、周りの騒がしさに集中をそがれるようになるという。
カナダ、Rotman Research Institute(トロント)のCheryl Grady博士らは、脳の活動状況を視覚化するファンクショナル(機能的)MRI(fMRI)で健康な中年者の脳機能を調査し、その結果を若年者、高齢者のものと比較した。被験者が一連の記憶課題を行う間、脳機能が記録された。
若年者では、記憶課題を行うと、背外側前頭前野(集中力を必要とする課題活動に関与)の活動が上昇し、同時に、内側前頭野や頭頂部(休止状態での非課題的な活動―例えば、自分のことを考える、周りを観察するなど―に関与)の活動が低下している。
しかし、このパターンは40〜60歳で崩れ始めるという。中年者の場合、記憶課題を行っても、「空想する部位」である内側前頭野や頭頂部の活動が停止せず、集中力に関与する背外側前頭前野の活動が低下していた。このアンバランスな脳活動は65歳以上でより顕著になり、これが高齢者では無関係な情報や注意をそらす情報が排除されにくいことの説明になるという。
Grady博士は「今回のfMRIの結果は、中年期が、若年者のパターンと高齢者のパターンの変換点であることを示している」と述べている。