適用範囲が広がる新しい脳卒中治療薬に期待
新しい脳卒中治療薬NXY-059の市販(承認)に向けて実施された国際的な研究で、同薬が脳卒中の緊急治療にわずかながらも重大な向上をもたらすことがわかった。米テキサス医科大学神経科教授James Grotta博士によれば、(虚血性)脳卒中から完全に回復する確率に約4%の差がみられたという。大きな数字ではないが、脳卒中の発症数の多さを考えれば重大な結果である。
NXY-059に期待が寄せられる理由は二つある。第一に、現在利用できる唯一の脳卒中薬である血栓溶解薬tPA(組織プラスミノゲンアクチベータ)は脳卒中発症後3時間以内の投与が必要なため、患者の約30%にしか適用できないが、NXY-059は発症後6時間まで投与できることから、治療を受けられる患者の適用範囲が広がる。また、副作用のあるtPAに対し、NXY-059では副作用は「あるとしてもわずかだ」とGrotta博士は述べる。
第二に、薬剤の作用機序が全く異なり、tPAが血餅(clot)を溶解させ血流を回復させるのに対し、NXY-059は神経をフリーラジカルによる損傷から保護する作用をもつ。このような神経保護薬は10年以上も探求されてきたが、NXY-059開発成功の理由として、同薬が神経細胞にのみ作用するのではなく、神経細胞を取り囲む細胞にも作用することが考えられている。
NXY-059の権利を所有するAstraZeneca社のJames McDermott氏によれば、市販が実現するかどうかは2,400例を対象に実施されている大規模臨床試験の結果次第である。米食品医薬品局(FDA)での審議動向にもよるが、2007年前半には承認申請を提出し、2008年前半には販売を開始できる見込みである。薬剤の商標名は未定。