お尻が大きい女性は安産?
赤ちゃんは骨盤を通る産道から生れてくるわけですが、実は、骨盤と見た目のおしりの大きさにはそれほど関係がありません。
やせている、またはおしりが小さいからといって骨盤が狭いとは限らず、腰が細くても十分な産道をもっている場合もありますし、逆に体格がよくても脂肪がついているだけで骨盤は狭い、ということがあります。
そもそも赤ちゃんが通る産道が狭いかどうかは、体の外から見ただけではわかりません。おしりが大きい=骨盤が大きいから安産、というわけではないのです。
また、これはバランスの問題ですから、骨盤が狭くても赤ちゃんの頭が小さければ問題はありません。ほとんどの場合は、赤ちゃんが通れるだけの大きさの骨盤を持ちあわせているものです。
実際にお産の進行を左右するのは、骨盤を通っている産道・赤ちゃんを押し出す娩出力・赤ちゃん自身の3つです。このうちどれか1つが欠けてもお産はうまくいきません。
お産が近づくに従って母体は徐々に準備を始め、ホルモンの働きで産道が柔らかく伸びやすくなり、骨盤と恥骨との結び目がゆるんで開きやすくなります。子宮口も柔らかくよく伸びるようになり、赤ちゃんがスムーズに降りてこられるようになります。
娩出力とは赤ちゃんを押し出す力のこと。子宮の筋肉が定期的に収縮を起こす陣痛によって、赤ちゃんがだんだん下がり、子宮口を押し広げていきます。さらに骨盤の中に赤ちゃんが入ると、産道が圧迫され、反射的にいきみたくなります。ここで腹圧をかけ、赤ちゃんが外に出るのを助けるのです。
赤ちゃん自身も、骨盤や産道を通るために自ら体勢を変えていきます。児頭の回旋といい、赤ちゃんがこれをうまくできないと、帝王切開になる場合もあります。
いくら見た目が関係ないとはいえ、実際問題として、母体が太り過ぎると難産になる可能性が高くなります。先にあげた安産の3要素すべてに影響が出てしまうのです。
まずは産道。太り過ぎると産道にも脂肪がつき、狭くなってしまいます。すると赤ちゃんはスムーズに降りることが難しくなり、産道の周囲の組織に傷がつきやすくなります。
また、母体が太り過ぎると赤ちゃんも大きくなりがちです。赤ちゃんが大きいと、子宮筋が伸びて子宮の収縮が悪くなり、陣痛がなかなか強くならず、お産が長引いてしまうこともあります。
こうした難産の原因になるほか、妊娠中毒症や妊娠糖尿病などにもかかりやすくなります。腰痛がひどくなるということもあります。
体重ばかり気にしてストレスになってしまっては元も子もありませんが、そういった意識をもつだけでも違ってきますから、楽な気持ちで出産にのぞみましょう。迷信、俗説、言い伝えなどを気に病む人も多いようですが、ほとんどは根拠のないものです。