病室はどうあるべきか
皆さんは、病気になったときに、どのような病院に入りたいでしょうか。また、病室は、相部屋がよいですか、それとも個室がよいですか。ホテルでも、相部屋だと安くなりますが、プライバシーは守れません。病室についても、同じことが言えます。
しかし、プライバシーを守るために個室を望むならば、差額ベッド料を支払う必要があるのです。自宅で日常生活を送っているときには、個室にいるのですから、病気になって入院しても、私なら個室を望みます。ただ、お金がかかるのです。
差額ベッドが初めて認められたのは、1984年で、ベッド数の上限は全ベッドの2割で、個室または二人部屋に限られていました。上限は、88年には3割まで、94年には5割まで緩和されましたし、94年には、4人部屋まで差額ベッド料を徴収できるようになりました。
2000年11月に厚生省が出した通達によれば、以下のような場合には、差額ベッド料を徴収できないことになっています。(1)患者が同意書による同意の確認をしていない場合、(2)緊急の患者や重体の患者のように、治療上の必要で差額ベッドを使う場合、(3)MRSなどに感染している患者による院内感染を防止するためなど、病院管理の必要性などから差額ベッドを使う場合です。
しかし、現実には、上記のような場合でも、差額ベッド料を請求されることがあり、患者と病院との間でトラブルになることがよくあります。それに、この問題については、税制上の取り扱いをめぐって、厚生労働省と財務省には見解の違いがあり、混乱に輪を掛けています。厚生労働省は治療に必要で差額ベッドを使った場合は料金を徴収してはならないとしているのに、国税庁は、医療費控除の対象となる差額ベッド料は、「医師の診療、治療を受けるために通常必要かどうかで判断する」としています。また、老人病院の自己負担分についても、国税庁は、個室などの特別室の使用料は医療費控除の対象になると言っています。
どちらの見解が正しいのでしょうか。上記のような国税庁の見解が出るというのは、現実には、治療上必要で差額ベッドを使っても、差額ベッド料を徴収しているケースが多々あることを証明しているのです。
この差額ベッド問題の背景には、病室は大部屋がよいか、小部屋がよいかという論争があります。大部屋の利点は、仲間がいて淋しくない、ある患者に何か緊急事態が起こっても同室の患者の誰かが気づいて大事に至らない、それにもちろん差額ベッド料がかからないなどがあげられます。しかし、問題も多々あります。プライバシーが守れないし、排尿排便をベッドの上でやらざるをえない患者の場合、周囲に気を使いますし、また周りの患者も迷惑です。
個室でも、大部屋の持つ利点を保つ方法はあります。淋しければ、ロビーや食堂などに皆で集うことのできるラウンジを作ればよいし、看護婦などのスタッフを増やし、巡回点検の頻度を増せば、不測の事態はそうは起こりません。要は、経費の問題です。差額ベッド料をとらなければ経営が成り立たない、また、スタッフを増やせば経営が成り立たない、それで先進国の病院と言えるのでしょうか。