コンタクト眼障害 放置すれば失明の危機も…
日本眼科医会が行った「コンタクトレンズ眼障害アンケート調査」の調査結果によると、コンタクトレンズ眼障害を起こした患者の6割が最初にコンタクトレンズをつくったときに検眼して以来、まったく定期検診を受けておらず、その3分の2は女性であり、平均年齢は26・3歳。20歳代が約半数、10歳代が約20%。
コンタクトレンズは薬事法で定められた医療用具であり、ユーザーがコンタクトレンズを購入する場合、その処方は医師のみに認められた医療行為であると同時に、その取り扱いに対する徹底した指導、定期的な検査、レンズの滅菌処理や洗浄の徹底などが正しく行われなければなりません。
しかし、実際には最初に買ったときの眼科医の処方があれば、以後の買い換えなどにあたって何の問題もなく、たとえ処方のない場合でも、すでに購入したレンズケースや空きビン、保証書のデータ(直径、度数、ベースカーブ)があれば、一部の薬局でも買え、インターネットによる通信販売で、海外からでも買えるのが実情です。
また、まるで装身具を扱うかのような誇大広告や安値を競う販売方法も問題。そうしたコンタクト市場の問題もあり、コンタクト眼障害に拍車をかけています。
コンタクトレンズはメガネに比べて黒目にぴったりと付着するため、視野が広く、視力も出やすく、さらに落ちにくいのでスポーツをするときなどに便利です。また、強い乱視や強い近視、左右の屈折度の差が大きいときなどに適しています。しかし、コンタクトレンズは眼にとっては異物ですから、装身具のような感覚で用いたり、安易に取り扱かったりすると、角膜を傷つけ、穴をあけ、視力低下や失明まで引きおこすことにもなりかねません。
自覚症状では、充血や目の痛み(疼痛)を訴えるものが約半数、眼がゴロゴロするなどの異物感が34・6%、その他ではかすみ、流涙、眼脂などがあります。
眼障害をおこす主な原因としては、装用したまま就寝したり、長時間の使用、コンタクトレンズの消毒や洗浄が悪かったこと、さらに汚れたコンタクトレンズの使用、レンズの傷、変形などによるものが多くみられ、使用者自身の日ごろの取り扱いの不備によるものも目立っています。
また、ハードに比べ、ソフトは異物感が少なく、慣れやすいというメリットがありますが、異常が起こったときに気づきにくいという難点もあります。そのため、コンタクトレンズ眼障害の患者のうち、通常のソフトコンタクトレンズによるものが41・7%であり、頻回交換レンズや使い捨てレンズ(ディスポーザブルレンズ)を含めたソフト系のレンズによる眼障害の割合は、70%にまでのぼっています。
とにかく、コンタクトレンズを装用している場合には、かならず定期検診を受けるべきです。もしかしたら、あなたの眼は、自覚症状もないままに、失明に向かって一直線に進んでいるのかもしれないのですから。
●上皮びらん
角膜に傷がついた状態で、角膜の表面の上皮が変性し、脱落した症状を示します。上皮全層にわたって大きく欠損したものから、表面だけわずかに欠損したものまでさまざま。コンタクトレンズの装脱時の機械的な刺激や傷、レンズの下に異物があるときなどにおこります。
●角膜潰瘍
上皮びらんを治療せずに放置しておき、欠損が角膜の奥の層まで及んだ状態。感染性と非感染性があり、感染性のものは角膜中央部におこりがちです。感染をおこすと、化膿性潰瘍性角膜炎になり、潰瘍が治っても白い濁りとして残りがちです。
●アカントアメーバによる角膜炎
アメーバ(微生物)がコンタククトレンズに付着し、それを装用することにより、角膜に侵入して炎症をおこします。アカントアメーバは通常、池や沼などに生息する微生物ですが、井戸水や水道水でレンズを洗ったときにレンズに付着することがあり、角膜の傷から侵入し、視力が低下し、放置しておくと失明します。
●角膜内血管侵入
コンタクトレンズの装用時間がオーバーしたり、不適切な使用などにより、レンズ下の涙が不足すると、酸素不足になり、それを補うために血管が伸びてきて角膜を侵し、中央部まで伸びていくと、視力障害がおこります。
●巨大乳頭結膜炎
一種のアレルギー性の結膜炎で、レンズによる上まぶたの刺激やレンズの汚れに対するアレルギー反応と考えられます。レンズをしばらく外して点眼薬で治療します。