男性の排尿トラブル 前立腺肥大
排尿障害の原因である前立腺の肥大は、50歳以上の男性なら多少は誰にでも起こります。前立腺とは、精液の一部を生産する男性特有の臓器で、膀胱の真下にあり、中心部分を尿道が通っています。前立腺肥大とは、その前立腺が異常に大きくなり排尿障害を起こす病気です。尿の出が悪い、何度も夜中にトイレに起きるなどの症状を自覚し、不便を感じるようですと、前立腺肥大症と診断されます。
肥大が進んでいくと、段階を経て排尿障害がどんどん悪化していきます。
刺激期 …… 尿道を締めつける筋肉の緊張が高まり、膀胱の出口が刺激を受けやすくなって、夜中何度もトイレに行く夜間頻尿になります。
残尿期 …… 尿が完全に出ないので、不快な残尿感を覚えます。
尿閉期 …… 尿道がふさがって排尿できない閉尿や、膀胱の尿があふれて漏れてしまう溢流性尿失禁などが起こることがあります。尿閉状態が続くと、腎後性腎不全や尿毒症を引き起こし、命に関わることもあります。
前立腺肥大の原因はよく分かっていません。加齢による男性ホルモンの働きの異常や、動物性のタンパク質や脂肪を多くとる欧米型の食生活が関係しているといわれています。
ここ数年で患者さんは急増。今後もますます増加すると考えられます。
前立腺肥大症の程度は「国際前立腺症状スコア」で自分でチェックできます。受診しようか迷っていたら、まずはチェックしてみてください。医療機関でも行われています。
国際前立腺症状スコア
最近1カ月の排尿に関する7つの自覚症状を点数化します。
国際前立腺スコア以外にも、医療機関の検査では、肛門に指を入れ直腸の壁越しに前立腺を触診する直腸指診、超音波で画像を映しだす超音波検査、尿の勢いや出具合いを調べる尿流測定、膀胱に残った尿の量を調べる残尿量測定などが行われます。
治療は病気の程度に応じて、症状が軽度から中等度の場合には薬物療法、重症の場合には手術療法が行われています。
薬物療法では、次の薬のうちどちらかを選択します。
●α受容体遮断薬……前立腺や尿道の緊張を緩和し、尿道を広げる薬です。血圧を下げる作用があるので、低血圧の人、降圧剤を服用している人は医師に相談してください。
●抗男性ホルモン剤……前立腺を肥大させる男性ホルモンを抑えます。副作用として、性機能が低下したり前立腺がんの発見が難しくなったりします。
症状が重症の場合は手術療法を行います。
●経尿道的前立腺切除術
先端に電気メスをつけた内視鏡を尿道口から入れて、前立腺を内側から少しずつ削るという、最も一般的で効果的な方法です。
●経尿道的レーザー照射術
内視鏡の先端にレーザー光線を照射する装置をつけ尿道口から入れて、肥大した患部を焼き切ります。
●経尿道的エタノール注入療法
尿道口から内視鏡を入れて、注射針を使用して前立腺にエタノールを注入し、肥大した部分の細胞を壊死させます。
●温熱療法
尿道口または直腸からカテーテルや器具を入れ、マイクロ波などで前立腺を温め、細胞を壊死させます。
排尿のトラブルに気づいたら早めに泌尿器科を受診するようにしてください。適切な治療を受ければ、再び快適な生活が送れるようになります。