足のアーチを守って 女性の大敵・外反母趾との別れ
外反母趾は、足の親指(母趾)が外側(小指側)に曲がり、その付け根が内側に飛び出してくる病気です。このため、その内側の飛び出したところが靴に当たって赤く腫れ、ひどく痛みます。重症になると関節がずれて、靴をはかなくても痛くなり、ちょっと足を地面につけただけでも激痛が走るようになることもあります。
この病気は遺伝的な体質と、靴や運動不足などの環境因子が原因となります。
遺伝傾向がありますが、必ずしも遺伝するわけではなく、もともと多い病気なのではっきりとはわかっていません。環境的な原因でもっとも問題になるのはハイヒールの普及です。
ハイヒールはつま先が細くてヒールが高く、足の甲で固定します。本来、体重は足の親指部分と小指部分、そしてかかとの三点で支えます。しかし、ハイヒールでは足の指が狭い靴先に押し込められ、しかもかかとでも支えられず、親指と小指の付け根の関節に体重がかかり、足の横のアーチが崩れて、足先の幅が広がってしまいます。
足のアーチは縦と横にあり、足のバネのような役割をしています。このうち、縦のアーチが崩れて平らになってしまった状態が扁平足です。これに対して、横アーチが崩れて、平らになってしまう状態を開張足といいます。この開張足が起きて足の幅が広がったところへ、さらに先の細い靴を履き続けていると、指が圧迫されて親指の変形が起き、外反母趾となります。
多くの人は外反母趾で足が痛くなると、炎症の部分が当たらないような幅の広い靴に変えようとします。しかし、これは根本的な解決策ではありません。一番の問題は開張足です。親指の変形の原因である開張足を防ぐように調整された靴を履かなければ、痛みは一時的に軽くなっても、外反母趾がひどくなるのを抑えることはできません。
開張足が起きると、縦のアーチも崩れてきて扁平足も起きてきます。何よりもこれらを改善することが必要で、そのためには、中敷きがあってしかも取り外すことができて、調整ができる靴が必要となります。足の縦横のアーチを中敷きで支えると外反母趾は改善するのです。
中敷きや靴などの工夫で痛みがとれない場合は、手術が必要になります。ただ、手術が必要となるのは、必ずしも重症の患者とは限りません。あらゆる処置をしてみても、骨の出っ張りが指の神経を圧迫したり、関節の軟骨がすり減っているためにどうしても痛みがとれないときは、足の変形がさほどなくても手術をすることになります。
外反母趾の手術にはたくさんの方法があり、患者によって痛みの原因が異なるので、それぞれの症状に合わせて行われます。一般的に片足の手術では2週間くらい、両足では1〜2カ月の入院が必要です。
もともと外反母趾で手術をするケースはそれほど多くないのですが、中敷きで靴の調整を行うことにより、以前よりも手術をしないで済むようになっています。
それでも、とにかく大切なのは、開張足にならないように予防すること。手術で足の変形を治した場合でも、原因となる開張足をそのままにすれば再発する恐れが高く、手術の後も中敷きによる靴の調整は欠かせません。したがって開張足を改善することが外反母趾の治療の基本になります。
ハイヒールは外反母趾の大きな原因ですが、だからといってハイヒールを履いてはいけないというわけではありません。女性にとっておしゃれは生活の一部のようなものですから、必要に応じて履いてもかまいません。ただし、履く時間はできるだけ短くしたほうがよいでしょう。TPOに合わせてハイヒールを履くようにし、例えば、通勤では歩きやすい靴に履き替えるようにしましょう。
歩きやすい靴とは、足先がきつくないように先端が丸いことはもちろん、ヒモ靴でかかとのホールドがしっかりしている、中敷きが土踏まずに合っている、靴底の堅さが適度で滑らないなどが条件となるでしょう。