貧血 -臓器の働きが低下することにとる貧血の症状と病院での治療法-
貧血になると、疲労感、倦怠感、めまい、頭痛、などといった酸欠の症状が現れます。ひどくなると、心臓、中枢神経などへの影響も……。しかし、貧血の進行が長い期間にわたってゆっくりと起こる場合には、強度の貧血であっても自覚症状が現れないこともあります。自分は大丈夫、などと勝手な判断をせず、病院で正確な診断をうけ、早期発見、早期治療を心がけましょう。
血液は実にさまざまな働きをしていますが、なかでも重要なのが、呼吸にかかわる働きです。肺に吸い込まれた酸素は、そのまま体内に入ることができず、ヘモグロビンが酸素と結合して、体内のすみずみに酸素を供給しています。したがって、貧血になると、疲労感、倦怠感、めまい、頭痛、頭重感、集中力の低下、眠くなるなど酸欠の症状が現れます。
ひどくなると、心臓にも影響が現れます。心臓は、酸素運搬能力の低下を補うために脈拍数を増やして心臓から送りだす血液量を増やし、不足を補おうとします。そのため心臓がオーバーワークになり、動悸、息切れを感じることがあります。
中枢神経への影響も見逃せません。めまい、イライラ、記憶力の低下、知覚異常などが起こります。
貧血の検査は血液検査によって行います。病院では、貧血の的確な診断をするために、血液中の赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット値(Ht)などを調べます。
この検査では、血液1立方ミリメートル中の赤血球数が、男性で420万個未満、女性で350万個未満は貧血と診断されます。ヘモグロビン濃度では血液100ミリリットル中、男性で13.0g/dl未満、女性で11.0g/dl未満は貧血。ヘマトクリット値とは血液中の赤血球が占める容積の割合いをいい、男性で40.6%未満、女性で31.8%未満は要注意ゾーンとされます。
これらの検査で得た測定値から計算し、貧血を分類、必要ならばさらに細かく検査していきます。
貧血が明らかになったら、治療を行います。貧血の治療方法は、貧血の種類や原因によって、それぞれ異なります。
もっとも多い鉄欠乏性貧血は、内臓や諸器官の疾病による出血が鉄を欠乏させている場合もあるため、鉄欠乏の原因を取り除くことから開始していきます。
また、鉄を摂取するための食事療法を行いますが、よほど軽度でない限り食事だけでは補えないため、経口鉄剤を使用します。しかし、この鉄剤を服用すると胃がむかむかしたり、食欲がなくなったりすることがあるため、服用が困難な場合は、静脈注射によって鉄分を補給する方法もよく用いられます。鉄剤を服用すると、だいたい2カ月くらいで血液中のヘモグロビン濃度は正常値に戻ります。
巨赤芽球性貧血についても、ビタミンB12や葉酸の欠乏の原因を改善するとともに、失われた栄養素を食事と薬物で補給します。鉄芽球性貧血の場合は、鉄・ビタミンB12 ・葉酸といった造血剤を使用しても効果がないため、治療としては輸血を行うのみとなります。
また、溶血性貧血では薬物および脾臓の摘出などの治療を行い、続発性貧血は貧血を併発させた元の病気を治療することで治ることが多くみられます。続発性貧血のうち、腎不全に続発する腎性貧血は、最近進歩してきた遺伝子工学によって産出されたエリスロポエチンの注射によってほとんどが治癒します。
難病のひとつとして指定を受けている再生不良性貧血については、薬物療法で効果が上がらなければ、骨髄移植が行われることもあります。