卵巣腫瘍をおこす子宮内膜症が若い女性に急増中
歌手の宇多田ヒカルさんが良性の卵巣腫瘍の摘出手術を受け、自身のホームページで手術後の状況や入院生活を説明。「行ったことのない女の子は、お願い! 私の心配をする前に、どうかお化け屋敷に入ってみるくらいの気持ちで産婦人科に行ってみてください」と呼びかけ、話題になっています。
この卵巣腫瘍をおこす母地になるのが子宮内膜症。厚生労働省研究班の調査では、国内の患者数は最低でも100 万人と推定されています。もともと20〜30歳代の女性に多く、生理のある10代後半から40歳代の女性にみられ、治療を受けている患者だけでも約13万人、潜在患者はその10倍とみられ、30年前にくらべ、約3倍近く増加しています。
子宮内膜症は、子宮の内側をおおっているビロード状のやわらかい部分で、脳からのホルモンの影響をうけて、毎月、厚くなったり薄くなったりしています。本来、子宮のなかにある内膜が、卵巣やおなかのなかに散らばり、不快な症状を起こすのが子宮内膜症で、確固たる原因はいまだに判明していません。
具体的な症状は、月経痛、性交痛、腰痛、排便痛などがあり、不妊症の3人に1人は子宮内膜症が存在し、子宮内膜症の女性の30%は不妊症というデータもあります。
卵巣に子宮内膜症が起こり、進行すると腫瘍がおこります。卵巣の腫瘍には、良性と悪性、その中間など、多くの種類がありますが、20歳前後の若い女性の場合には、良性では成熟嚢胞性奇形腫とチョコレート嚢腫が多くなります。チョコレート嚢腫とは卵巣に子宮内膜の組織や血液がたまり、変色してチョコレート状になることから、こう呼ばれているもの。
治療は、薬物治療と手術で腫瘍を摘出する方法とがありますが、日本の場合にはまず薬物治療が先行します。欧米では逆で、手術で摘出してから薬物治療で経過を観察することが多く行われています。宇多田さんの受けた「腹腔鏡下手術」は、腹部3カ所を小さく切開、そこから内視鏡を入れて摘出する手術(産経新聞報道)。手術後には低用量のピルで偽妊娠状態にする方法と、ホルモン剤で偽閉経状態にする方法があり、日本の場合には、低用量のピルが健康保険適用になっていないこともあり、後者の治療が行われることが多くなっているそうです。
なぜ、こうした子宮内膜症から卵巣腫瘍を起こす若い女性が増えているのかについては、原因がよくわかっていませんが、昔よりも妊娠が減り、排卵の回数が増えたため、卵巣に負担がかかっていること、また無理なダイエットやストレスなどが卵巣に影響し、機能が低下しているのではないか、などが考えられています。
いずれにしても、自覚症状が出にくいので、生理痛がひどくなったり、出血量が増えるなどの変化とともに、腰痛、下腹部痛など子宮を中心にしたあたりに痛みがあったら、宇多田さんも呼びかけているように、早い時期に産婦人科を受診してみましょう。早期に治療すれば、不妊を起こすことも少なくてすみます。