月経困難症・月経前症候群・月経前不快気分症候群
月経困難症について
月経困難症は生理中のトラブルの総称で、日常生活を営むのに困難をきたすほどの症状があると、こう呼ばれます。その症状は下腹部痛、いわゆる生理痛のほか、腰痛、頭痛、背中の痛み、下腹部の張り、吐き気、嘔吐、全身の倦怠感、発熱などがあります。月経困難症には、原発性月経困難症と続発性月経困難症の2種類あり、それぞれの特徴は以下の通り。
原発性月経困難症
10代後半から20代の若い人に多い。
痛さの程度はいつも同じ、だんだんひどくなるということはない。
痛みは生理の直前か、生理開始と同時に始まり、1〜2日でおさまる。
出産後軽くなる人が多い。
続発性月経困難症
30代後半に多い。
これまで何ともなかったのに、あるときから突然、症状が出始める。
痛みが生理の間、ずっと続く。
生理のたびに、痛みがだんだん強くなる。
原因となっている病気を取り除けば、痛みはおさまる。
月経随伴症状
月経前症候群
一方、月経の前にその症状が始まるのが月経前症候群PMS。妊娠に関わりの深い黄体ホルモンが関係しているともいわれています。排卵日以後、黄体ホルモンの分泌が急激に増え、月経1週間前から減り始めます。この黄体ホルモンの変動が自律神経のバランスを崩させ、とくに減ることにより症状が強く現れます。
月経前症候群の特徴
排卵のあと(黄体期)、とくに生理の数日前または7〜10日ぐらい前から症状が出る。
生理直前が最もひどい。
生理が始まると症状が軽くなり自然に消えていく。
出産経験のある成熟期の女性に多い。
症 状
(症状は数限りなくあり、150にも及ぶといわれます)
○ 精神的にはイライラする、怒りっぽくなる、興奮しやすくなる、憂鬱になる、性欲の低下や亢進など。
○ 身体的には頭痛、偏頭痛、乳房の張りや痛み、腹痛、下腹部痛、吐き気、嘔吐、むくみ、体重の増加、のぼせ、ほてり、手足の冷え、下痢、便秘、動悸、眠気、不眠、倦怠感、食べ過ぎ、食欲不振、のどの乾き、じんましん、にきび、肩こり、めまい、口内炎、目の充血など。
犯罪とも関わることがある
日清製油が1999年、20〜30代の働く女性300人を対象に行った調査では、約93%もの女性が月経前に何らかの身体的、精神的な症状を自覚し、そのうちの約半数がこれらの症状を気にしていることがわかっています。
古いデータですが、1961年にイギリスの医学博士キャサリーナ・ダルトンが女性の犯罪者について調査したものがあります。調べた156 人の初犯の女囚のうち、じつに49%の人が犯行日に月経前症候群の症状を示しており、その割合は窃盗罪が最も多く、56%にものぼっています。また、刑事裁判における女性被告減刑の免罪符になったこともあり、専門のクリニックまであります。
今話題の月経前不快気分症候群PMDD
最近話題になっているのが月経前不快気分症候群PMDD。これは月経前症候群PMSと似ていますが、放置しておくと本格的なうつ病にまで進んでしまうこともあるといわれています。
普段は元気なのに、生理前になると突然イライラや不安感がつのる、甘いものがむしょうに食べたくなる、眠くてしかたがないなどの症状に悩まされるのが特徴。非定型うつ病のひとつとされています。
月経前症候群PMSの重症化したケースともいわれていますが、月経前症候群とは区別され、欧米では20〜40代の女性の約3〜8%が月経前不快気分症候群という調査報告もあるそうです。
アメリカで1994年に初めて認知され、精神医学会による研究用基準案には「黄体期(次の月経までの期間)の最後の週の大半に、著しい抑うつ気分や不安、緊張、怒り、倦怠感などがみられ、卵胞期の開始後2〜3日以内に消失し始め、月経後一週間はみられない」と定められています。
「中等度のうつ病だが、一般のうつ病との相違点は、過眠や過食の症状が目立つことやむくみの感覚が顕著なこと、放置により、本格的なパニック障害に進むことがある」と分析する医師もいます。
気分のアップダウンがあるという点では、一見、躁うつ病と似ていますが、生理が始まれば、社交上問題はほとんどなく、ほんの一時期に気分が落ち込んでも、自殺を考えるほどの重傷のうつ病ではないため、がまんしていることが潜在患者を多くしていることにもつながっているようです。