生活習慣病-心臓病- 医学的検査を活用して、予防につとめよう
突然死とは、発症してから24時間以内に死亡してしまったときのことです。実は、その60%が心臓死。心臓死の原因の第一位は心筋梗塞。心筋梗塞の原因は動脈硬化。ですから、動脈硬化を予防すれば、心臓死も、突然死も予防できることになります。がんの4倍にものぼる患者がおりながら、がんよりも死亡者数が少ないのは、動脈硬化の段階で発見し、治療すれば、かなりの高率で治療が可能だからといえるでしょう。
動脈硬化は、お年寄りの病気ではありません。若い人でも起こっています。実は、血管の老化は10歳くらいからすでに始まっているといわれますから、たいていの人が動脈硬化を抱えていることになります。ただし、どこにどのくらいの程度で起こっているのかについては個人差があり、ある人は冠状動脈の病変がひどくても脳の動脈には変化がなかったり、別の人は逆に、脳の動脈はボロボロの状態であっても、冠状動脈のほうはきれい、ということがあります。
したがって、個々人によってまったくその状態はちがい、統計的・疫学的な分析はできたにしても、画一的に動脈硬化の状態を語ることはできません。
もし、自分の冠状動脈の動脈硬化度を知りたいならば、運動負荷心電図がもっともポピュラーで安全な方法です。本格的にはアイソトープを使って、心筋の酸素の出入りを調べるなどの方法があります。
心筋梗塞を起こした場合には、直接的には冠状動脈に管を通し、造影剤を入れて行う冠状動脈造影法を行います。これによってかなり細かな情報が得られ、治療方針をたてる上での最後の決め手になります。
心臓に異常があるかどうかをチェックするには、心電図で心臓の動きを調べる方法が一般的です。心電図の検査結果はミネソタコードという番号で出てくるので、私たちがみてもわかりません。専門医の指示にしたがってください。
虚血性心疾患があれば、心電図に特有の変化が見られます。心電図の異常には、通常2つのパターンがあり、ひとつは冠動脈に硬化などが起こり、狭窄しているために心臓の筋肉に異常が起こっている場合です。もうひとつは、心臓の収縮するリズムの乱れです。
不整脈の95%は生命に危険のないものですが、分単位で死亡する瞬間死は不整脈によるものがほとんど。緊急に治療の必要な致死不整脈には心室細動や心室粗動、その前触れとなる心室性頻拍などがあります。
心電図検査で、下記のような結果が出たら十分に注意してください。
心電図の検査で異常が出たり、より詳しい検査が必要な場合には、運動をすることにより心臓に負担をかけたときの動きを見る「運動負荷心電図」をとったり、携帯型の装置で24時間の心臓の動きをチェックするホルター心電図などで、よりくわしく心臓の動きをチェックします。さらに詳細な検査が必要な場合には、心エコー検査、心臓カテーテル検査などを行います。
心電図の所見以外にも血圧が高い、コレステロール値が高い、血糖値が高い、尿酸値が高い、肥満度が高い、大きなストレスを抱えている場合には、虚血性心疾患の危険度が高くなりますので、早急に改善してください。
不整脈
脈が不規則になったり、途切れたりします。とくに心配のないものから、なんらかの病気に関わるものまで原因はさまざま。心電図検査によって心配しなければならないものか、心配のないものかの診断ができます。
虚血性心疾患・冠不全
冠動脈の動脈硬化が進行し、心臓に血液を送れなくなった状態で、動脈硬化が軽い場合いには狭心症、進行すると心筋梗塞を起こします。精密な検査が必要になります。
心肥大
高血圧や心臓弁膜症などによって心臓に負荷がかかり、心筋、とくに心室の筋肉が肥大した状態です。精密な検査が必要になります。
脚ブロック
心臓に伝えられる刺激が、脚部で一時的に乱れたり、中断したりする状態です。右脚ではあまり心配ないものですが、左脚の場合にはなんらかの病気が原因になっていることがほとんどですから、定期的に検査します。
房室ブロック
心臓は右心房、左心房、右心室、左心室の4つのブロックから成り立っています。このなかの房室付近で刺激が一時的にせき止められた状態で、程度によっては心疾患に起因していることが多いので、詳しい検査が必要です。
期外収縮
規則的な刺激に、不規則な刺激が混ざった状態で、心電図に乱れを生じ、自覚症状もあります。寝不足、疲労、ストレス、たばこの吸い過ぎなどでも起こります。心臓病がないならば心配ありませんが、定期的な検査が必要です。
洞徐脈
心拍数が1分間に50回以下に減少します。運動選手や力仕事をしている人、高齢者などにみられ、心臓に異常がなくても起こります。
洞頻脈
心拍数が1分間に120回以上に増加するもので、なんらかの病気で起こるものと精神的な興奮や発熱、運動などで起こるものがあります。
心房細房
心房が不規則、無秩序に興奮する状態で、リウマチ、高血圧性心疾患、バセドウ病、心不全などが原因で起こることがあります。
狭心症の治療では、発作がなるべく起こらないようにすること、発作が起きた場合、速やかにおさめる処置をとることがポイントになります。また、労作狭心症では、発作が起きるほどの激しい運動や精神的負担を与えないようにすることが大切です。
発作が起きたときには、専門医の処方によるニトログリセリンを舌下に含み服用します。1〜2分で効果が現れます。作用時間も短く、15〜30分で切れてしまいます。効果をもっと長時間にし、発作の予防にはニトロールなどの硝酸薬が使われます。ニトロールは、2〜5分で効き始め、2時間持続します。そのほか、皮膚に張りつけるテープ型やパッチ型のものもあります。
急性の心筋梗塞の初期(6時間以内)では血栓を溶かすためにプラスミノーゲン・アクチベータ(t−RA)やウロキナーゼなどが使用されます。
細くなった動脈部分を広げる治療法、PTCAが行われます。これはバルーン療法ともいわれるもので、大腿動脈や上腕動脈からカテーテルを挿入し、X線で写し出すモニターをみながら狭窄部分に挿入。カテーテルの先には風船がついていて、これをふくらませることにより、狭くなっている部分を広げます。危険率は1%程度で、開胸手術ではないので1週間程度の入院ですみます。
動脈硬化は、高齢になると、全身の動脈に起こる場合もありますが、50代あたりでは、ほとんどが部分的です。そこで詰まりかけている部分の血管にバイパスをつくったり、アテロームカッターでアテロームを削り取ったり、ステントというカゴのようなものを押し込んで広げたりして治療します。