ためになる栄養素シリーズ
立秋を過ぎてそろそろ暑さも峠を越えたようですが、まだまだ気は抜けません。ダメージはむしろこれからオモテに出てくるのです。あなたの肌に、内臓に、夏の疲れが溜まっていませんか。秋を爽やかに迎えるためにも、夏バテから早く早く立ち直りたいものです。そこで食欲・健康・美肌を回復するのに役立つ情報をお届けしましょう。味をピリッと引き締めてくれる「辛味」の成分カプサイシンが、あなたの強い味方になります。
ソムリエはワインの味や香りをいろいろな言葉で表しますが、私たちの舌は何種類の味を味わうことができるのでしょう。漢方医学では「医」と「食」を切り離しては考えられません。味には五味といって「甘い」「辛い」「酸っぱい」「苦い」「塩からい」の5種があり、それぞれが重要な働きをしているので、バランスよく食べることで健康のバランスも保っていけるというのが漢方の考え方です。
味にどんな役割があるかというと、甘味には、ゆるめる働きがあるのだそうです。たしかに甘いものを食べるとホッと心も寛ぐような気がします。酸味はまとめ、収める働き、また苦味には、たるみを引き締める働きがあるのだとか。そして、塩からい味は渇きを防ぎます。・・・しょっぱいものを食べた後は喉がかわくので、話が逆のような気もしますが、塩は湿気を呼びやすいので、そこからきているのかもしれません。そして辛味には、滞りを解消させる働きがあるそうです。夏の間に溜まった脂肪や疲れも、辛味で散らすことができたらいいですね。
トウガラシやピーマンが辛いのは、「カプサイシン」という成分のためです。このカプサイシンが今回の主役。トウガラシやピーマンは赤や緑ですが、カプサイシンそのものは白い結晶です。カプサイシンはエネルギーの代謝をよくします。トウガラシを食べるとポカポカしてくるのは、実際に体内のエネルギーが燃えるからなのですね。辛い刺激は血管を収縮させるので、血行がよくなり、疲労回復や老化防止にも役立ちそうです。食欲がない時、七味や一味を一振りすると、ほどよい刺激で内臓が活気づきますね。「もう一口食べようかな」という元気も出てきそうです。
子供の頃、寒い季節はズック靴の中にトウガラシを入れたという年配の方もおいででは? 最近はシップ薬にも、カプサイシンを使った温感タイプが市販されています。カプサイシンは食べるだけでなく皮膚からも吸収でき、皮膚の温度を上げる効果があるのです。ただし刺激が強いので肌の弱い人や子供への利用はご注意を・・・。逆にこの刺激を利用して、日本薬局方では、アトピーの子供のかゆみ止めにカプサイシンの効能が認められています。
エネルギーは体内に脂肪として蓄えられています。つまりカプサイシンの「エネルギーを燃やす」働きは、余分な脂肪を燃焼させたい人には好都合なわけです。エネルギーを燃やすのは普段の運動の時にも行われていることで、私たちの身体がもともと持っている機能です。従って、カプサイシンの利用は無理のない自然なダイエットといえるでしょう。とはいえトウガラシは刺激物ですから、食べすぎれば内臓を傷めることもあります。くれぐれも、量は程々に。ちなみにトウガラシの粉なら1日1グラム程度で、効果が期待できるそうです。
韓国の女性には、肌のきれいな人が多いと思いませんか? 美肌の秘密は食べ物や韓国式サウナだけでなく、カプサイシンにもありました。カプサイシンを摂ると、その辛さが中枢神経を刺激し、交感神経を働かせて、全身に汗をかきます。タップリ汗をかくと水分だけでなく皮脂も分泌され、肌の表面はいわば天然のクリームで覆われます。これで乾燥を防ぐことができ、また表面の角質も潤うので、ピチピチで潤いのある「張り肌」が実現しするというわけです。
ハバネラというのが世界一辛いトウガラシ。最近はスナック菓子にこれを使ったものがありますので、その辛さも比較的手軽に体験できます。辛いというより「熱い」とか「痛い」に近い刺激でしょうか。辛さの単位は「スコヴィル」であらわします。ちなみに日本のトウガラシ「鷹の爪」の辛さは50000〜60000スコヴィル。ハバネロは「30万スコヴィル」だそうです。