自分だけの枕を探して快眠しよう!
枕が変わると眠れない、という人は案外多いものです。プロのスポーツ選手では枕持参で遠征にでかける人も少なくありません。彼らにとっては、よく眠れたかどうかは快調なプレイにもつながる重大事だからでしょう。それは一般の人でも同じです。快眠を得た日は調子よく、仕事も勉強も快調に進みます。その快眠を得るための重要なグッズが枕。そういえば、“なんの憂いもなく安心できる”ことを「枕を高くして寝る」といいますが、自分にぴったりあった枕をみつけることは、快眠とともに、心を安らげるツールにもなるようです。
快眠枕……とひと口にいっても、その定義は非常にむずかしいものです。なぜならば、快眠感とは枕に頭をつけたときに感じるものではなく、朝、目覚めたときの熟睡感によるものだからです。寝床に入り、枕に頭をつけたときに、それがどんなに気持ちよくても、翌朝の熟睡感につながらなければ、その枕はあなたにとっての“快眠枕”にはなり得ません。
ただし、熟睡感を枕だけのせいにするのはかわいそう。熟睡は枕だけの責任ではなく、総合的な睡眠環境が整ってはじめて得られるものだからです。そこには、ほかの寝具もあれば、気温、湿度、明るさ、物音など、さまざまな条件が必要になります。
それでも、何よりもたったひとつの枕のもつウエイトは大きい……そう思う人も少なくありません。
そこで、自分だけの快眠枕を探すために枕を科学してみましょう。
私たちは1晩寝ている間に20回近くも寝返りをしています。そのため、まずどんなに寝返りをうっても頭から枕がズレないだけの大きさが必要になってきます。また、枕は頭だけをのせるだけのものではなく、後頭部から首筋にかけての全体で頭部を支え、肩先までの保温が確保できることが必要条件です。これらの条件を満たすためには、横幅は約60センチ、奥行き約50センチが必要といわれています。 各メーカーによって枕の大きさには多少違いがありますが、一般的には50〜70センチ前後。日本の枕は歴史的な背景もあってか、欧米に比べてサイズが小さく、とくに日本式の旅館や民宿、あるいは病院の枕などは小さすぎるようです。
最近はベッド用として大きめの枕も市販されています。ベッドの上でクッションとしても使えるようなサイズになっていたりもします。買い求めるときに大きさに注意をしないと、せっかく寝具類やインテリアとコーディネートしたお気に入りのピローケースが使えなくなってしまいます。
文字どおり、枕を高くして寝る、ときの枕の高さです。枕を高くすることが安心のシンボルだとしても、高ければ高いほど安心できるというものではありません。
人間は2本の足で直立歩行をするために、背骨が首から腰へかけてS字カーブを描いています。このカーブを保持したまま、力を抜いて立っているときが、筋肉、血液の流れ、その他の器官にいちばん負担が少ない姿勢です。寝ているときも、この姿勢のままがいちばん楽で負担がありません。ところがこの姿勢のまま横になると、首と頭とに隙間ができてしまいます。そこで、これを埋めるのが枕の本来の役目。この隙間は背骨のS字カーブによって生じるものですから、カーブに個人差があるように、この隙間にも個人差があります。当然、その違いは枕の高さの違いになります。自分なりの隙間の高さを正確に測り、そこをきっちり埋める枕がその人にとっての理想の高さ。
枕が高過ぎると首を不自然に曲げることになるので、後頭部から首、肩の血行を悪くし、首筋や肩こりの原因になってしまいます。それにともない呼吸や脈拍も速くなるため、脳が刺激を受け、深い眠りを得にくくなります。
枕と頭との温度は、その間に存在する水分および水の量が関係しています。寝ている間にかく汗の量は、1晩にコップ1杯といわれていますが、この汗のうち、頭からの汗は茶さじ約2杯、3グラム。当然、汗の量は外気温や湿度に左右されます。
枕をしたときに快適と感じるのは、皮膚との接触面との間につくられる気候(衣服内気候)との関係。快適と感じるのは、衣服内の温度が31〜33℃、相対湿度が40〜60%、気流が10〜40cm/毎秒といわれています。。
柔らか過ぎる枕は寝たときの姿勢に安定性を欠き、弾み過ぎる枕も寝返りを打つたびに筋肉を不安定に刺激し、安眠を妨げます。そしてまた、硬過ぎる枕は、眠りの中枢が刺激され、目が覚めやすくなってしまいます。
枕の硬さは、なかに詰める素材によって違ってきますが、頭をのせたときに沈む程度は、約20%が適当とされており、40%以上になると頭部の接触面積が増えて寝苦しくなってしまいます。
羽根
一般に寝具の素材として羽根というと、羽毛と羽根に分けられます。羽毛はダウンといわれ、鳥の羽の根元にあるタンポポの綿毛のようなもの。羽根はフェザーといわれる硬い軸のある羽の部分です。
枕には適度の弾力性があり、吸湿発散性に富むフェザーのほうが優れているといわれていますが、ダウンの入ったフワフワの枕もあります。湿度の低い日に陰干しし、枕のなかの空気を何回か出し入れして手入れします。
パンヤ
パンヤの木の種子に生える毛で、木の名前からパンヤと呼ばれている綿です。繊維がスベスベしているので糸につむぐことができず、ふとんや枕の詰め物に使われます。吸湿性がよく、独特の柔らかがありますが、コシが弱く、へたりやすいのが難点。頻繁に日光に当てて乾燥させると長持ちします。
ウール
一般に寝具の素材として羽根というと、羽毛と羽根に分けられます。羽毛 羊から刈り取った毛がウール、羊毛です。繊維はスプリングのように縮れており、この縮れのために約60%も空気を含み、冬暖かく、夏涼しい環境がつくられます。表面は水をはじく性質をもちながら、内部は吸水性に優れているという二面性があり、汗をかいても蒸れずにさらっと爽やかな感触を保ちます。とくに球状のウールは圧縮回復力に優れており、耐久性も抜群です。
そばがら
日本の枕の代表的な詰め物素材。吸湿性がよく、独特のひんやりした感じがあります。適当な硬さがあり、熱気がこもらないために、爽やかな感触が楽しめます。じめじめした日本の夏には最適。ただし長期間使用していると、そばがらがつぶれ、粉化してへたってきます。また湿気を含んだ状態で長く使用していると、チャタテ虫がつきます。この虫自体は人体に無害ですが、これを食べにくるツメダニが寄ってきたりするので乾燥させておくことが大事です。
ポリエステル綿
何千もの小さなふわふわした合成繊維、ポリエステルの綿で、優れたカサ高性と弾力性をもちます。繊維が切れにくいので綿ぼこりが発生しにくく、丸洗いも可能。柔らかいので頭が沈み込んでしまうため、柔らかい感触を好む人にはおすすめでも、硬い枕を好む人には不向きです。メーカーによって球形にした綿状のものを使用しているところもあります。
合成樹脂
ポリエチレン製の小さなビーズやパイプ。メーカーによって呼び名が違いますが、どれも穴があいており、通気性がよいようにできています。パイプはストローを輪切りにしたタイプ、ビーズ(ビーンズ)は穴のあいた球形をしており、ともに通気性に優れています。天然素材にくらべ、耐久性がよく、ほこりや虫の心配がありません。静電気によりほこりを吸着するので、2〜3カ月に1回程度洗うと衛生的。
ウレタンフォーム
機能性枕の素材として最近もっとも人気の高い素材がウレタンフォームです。そのウレタンフォームのなかでも低反発ウレタンフォームが主流。低反発とは、圧力を分散、吸収し、反発しないものをいいます。反発しないので、圧迫感がありません。使う人の頭の形、首の形に合わせて変形するので、どこか1点に集中的に力が加わることがなく、こりの防止になります。