人類が生み出した環境汚染が主原因光化学スモッグによる障害
工場の煙や自動車の排気ガスなどに含まれる窒素酸化物と炭化水素。この大気を汚染している物質が太陽光線にあたると、紫外線の作用で光化学反応をおこし、オゾンやケトン、アルデヒドなどの酸化性物質の総称であるオキシダントという有害な物質を生成します。このオキシダントが空気中に停留し、高濃度になるとスモッグ状になることがあり、これを光化学スモッグといいます。そして、この光化学スモッグによって引き起こされるのが光化学スモッグによる障害です。
光化学スモッグは、目や気道の粘膜を刺激し、目の痛み、チカチカ感、涙、まぶしさ、喉の痛み、せきなどの症状を引き起こしますが、ときには刺激による数回の呼吸(過呼吸)により二次的に失神発作やけいれん、呼吸困難などの症状が現れることもあります。発生には強い太陽光線がかかわっているため、夏の正午前後に多くなります。
以前は何万人もの被害を出した光化学スモッグも、気象庁や自治体の努力もあり、昭和50年以後は、呼吸困難や末梢神経障害、けいれん、意識障害といった、いわゆる重症例は急激に減少していますが、大気汚染だけが原因ではなく、気象条件によっても発生が異なるため、たとえ大気汚染状態が同じであっても、無風の真夏日が続く年には、被害が拡大します。
オキシダントの濃度が1時間平均値で0.12ppm以上になり、なおかつ無風晴天時など、光化学スモッグの出やすい気象条件がそろうと、気象庁は各自治体に情報を提供します。自治体は独自に収集した情報などと総合して、光化学スモッグの注意報・警報などを発令し、工場などには煤煙の排出量を少なくしてもらうなどの措置が講じられ、教育機関や報道機関を通じて住民に知らせます。
予防法にはこれといったものがないため、光化学スモッグの注意・警報が出たときは、屋外や炎天下での激しい運動を控え、屋内に避難することが大切です。また、排気ガスで光化学スモッグを増長させないためにも、車の使用を避けましょう。
もしも症状が出ても、眼症状や咽頭症状の多くは一過性のものなので、風通しのよい涼しい場所で安静にしていれば治ります。必要に応じて薄めの食塩水や水道水でうがいや洗眼を行います。それでも症状が軽減しない場合や呼吸困難、手足のしびれ、けいれんなど全身症状がみられるときは、精神安定薬の投与や酸素吸入、過呼吸症状にはビニール袋や紙袋を用いた呼気の再呼吸など、内科的な処置が必要となりますので、できるだけ早く医師の診断を受けてください。