アルコールと肝臓の微妙な関係 やっぱり必要な週1〜2回の休肝日
お酒を飲む機会が多くなると、ふと心配になるのが肝臓のこと。1週間に1〜2日は休肝日をつくるようになどといわれれば、余計にお酒と肝障害の因果関係が心配になります。でも、実はアルコールが原因の肝障害は肝臓病全体からみれば、意外と少ないのです。とはいっても、多量のお酒を飲み続ければ肝障害を起こす確率は高くなりますから、お酒の飲み方には注意したほうが得策であることには違いありません。
肝臓の病気を原因別に分けると、ウイルス性、アルコール性、薬物性、自己免疫性の4種類に大別されますが、このなかでもウイルス性の肝炎がもっとも多く、肝臓病全体の約80%を占めています。肝炎ウイルスは現在、A型、B型、C型、D型、E型、G型、TTVの7種類が発見されており、ウイルスの種類によって、感染のしかたや潜伏期間、症状にも違いがあり、急性肝炎、慢性肝炎、劇症肝炎などがあります。
残りの20%の大部分がアルコールが原因で起こる肝障害となりますが、そのほかに体質に合わない薬を用いたり、必要以上に多量に薬を服用することで起こる薬物性肝障害、免疫異常によって起こる自己免疫性肝炎があります。
主な肝臓病には、肝炎、肝線維症、肝硬変、肝がんなどがありますが、最近、健康診断や人間ドックなどで脂肪肝と診断されて、病院を訪れる患者が大変増えています。脂肪肝の主な原因は栄養のとり過ぎか酒の飲み過ぎです。
アルコールを大量に飲むと、肝臓の働きは低下し、エネルギー源でもある脂肪の分解と放出が十分にできなくなります。このため、肝細胞に中性脂肪がたまり、肝臓全体が脂肪太りの状態になってしまいます。これがアルコール性脂肪肝です。
肝臓が脂肪肝になってしまうと、肝機能の低下を招くばかりか、放置すれば生活習慣病の原因にもなります。とくにアルコールが原因の場合は要注意で、放置していると肝硬変に移行することがあります。
幸い、脂肪肝は重症の場合は別として、軽・中等度程度なら入院して治療することはなく、薬を使わずに治療で治すことが可能です。
アルコールが原因で起こる肝障害には、脂肪肝、肝炎、肝線維症、肝硬変などがあり、肝硬変になると肝がんが発生してしまう可能性があります。
アルコールは肝臓の働きによってエネルギー源に変えられますが、大量にアルコールを摂取すると、肝臓に大きな負担がかかり、肝細胞は解毒作業に追われて疲労し、傷ついてしまいます。
つまり、限度を超えてお酒を飲み続けると、肝臓に余計な脂肪がたまって脂肪肝になったり、傷ついた肝細胞が線維化する肝線維症の原因になったりします。そしてそれらを放置して病状が進行すると、ついには肝線維症が肝臓全体に広がり、やがて肝硬変にいたります。
アルコール性肝障害の出方には個人差(体質)がありますが、単純にアルコールが原因の肝炎の場合は、禁酒して養生すれば1〜3カ月くらいで病状は改善されます。しかし、ウイルス性肝炎を合併していると、アルコールがウイルス性肝炎の病状を悪化させることは間違いなく、肝臓がんにもなりやすくなるので、愛酒家はより注意が必要です。
いずれにしても、アルコール性肝障害は、脂肪肝の段階で適切に対応することが治療の基本です。
個人差がありますが、一般的には日本酒にして3合以上を毎日5年間飲み続けると、肝障害を起こすことが多いといわれ、酒量が多く、期間が長い人ほど発生率が高く、また、女性はアルコール性肝障害を起こしやすいとされています。
アルコール性肝障害では、血液検査でのγ−GTPが著しく上昇しますが、原因がアルコールのみなら、禁酒するだけで肝機能のバロメーターとなるGOT(AST)、GPT(ALT)などは速やかに下がります。
一般的に、肝細胞にあまり障害がなく、合併症もない軽度のアルコール性肝障害なら、数日お酒を控え、肝臓を休ませれば症状はかなり回復します。中等度以上の脂肪肝、肝炎、肝線維症なども2〜4週間くらい禁酒すれば病状が改善。アルコール性肝障害には「禁酒」「断酒」こそがいちばん効果的な治療法です。
アルコール性の脂肪肝に肥満や糖尿病などが合併しているときは、禁酒療法に食事療法をとり入れ、症状を悪化させないことが大切です。食事は栄養バランスを考え、高たんぱく、高ビタミン、高ミネラル食を中心としたカロリー調整がポイント。糖尿病がある場合は専門医との連携が必要です。禁酒と食事療法でも、肝機能に改善がみられないときは脂肪性肝炎といって肝硬変に進む特殊な脂肪肝もあるので、専門医にみてもらいましょう。
アルコール性肝炎にウイルスが合併している場合には、ウイルスに対する治療を同時に実施します。特に患者がC型肝炎ウイルスのキャリアだと、慢性肝炎の進行が早まることも多いので、肝炎を悪化させない治療が必要となります。
いずれにしても「禁酒」「断酒」が治療の基本。私の肝臓は大丈夫……という酒豪の人も週に1・2回は「休肝日」を設けるなど、お酒の飲み方を工夫して肝臓の負担を減らしましょう。