医学の起源
人類の発祥とともに何らかの医療行為があったと言われている。
しかしこれが医学としてまとまったのは何時頃からであろうか。
世界には三大伝統医学というものがある。中東アラビアを中心とするユナニ医学、インドのアユルベーダ医学、そして中国を中心とする中国医学であり、漢方もその一つの流れを承けている。
いずれの伝統医学も、自然界の中で偶然によって支配されていた生活から脱け出し、混沌の中に蓋然性そして必然性を求めようとする人々の切実な希求から発達してきた。
偶然性の中に必然性を求めるという姿勢は科学的思考といえよう。
暦、方位、数学………。
そして個人の出生もまたアクシデントではあろうが、人間は自然界の中で偶然に生まれ蓋然を求めて生き、結局は必然的に死に至る存在でもある。
こうした人間と科学の問題は、二十一世紀の日本の医学を考えるうえで重要な鍵となるのではなかろうか。
では、このような人間の科学に対する思考がいつ始まったかについて少し考えてみたい。
それは人間の文化がいつできたかということにも繋がるが、古くは猿人や原人と溯ればきりがなくなる。ただ文字に注目して言えば、やはりメソポタミアということになる。
これにエジプトが続き、同じ頃インドにも生まれた。
即ちハラッパ、モヘンジョダロの古文化であるが、これはやがて消滅し、以後アーリア文化へと変わってゆく。
紀元前2000年位のことであるが、丁度その頃、中国では殷文化が黄河流域に生まれ甲骨文字が生まれた。
歴史を追っていくとこれらのことがすべて偶然に発生したとは思えず、そこにはやはり一つの流れがあるように思われる。
四大古文化圏、即ちチグリスユーフラテスからエジプト・インド、そして中国へと、つまり東西文化の融合は既に数千年前から行われていたことになる。