前立腺について学ぶ
泌尿器と前立腺のしくみとはたらき
泌尿器と前立腺のしくみ
泌尿器とは、尿をつくり、老廃物を体外に排泄する器官の総称で、腎臓、尿管、膀胱、尿道が含まれます。男性だけにある前立腺も、その一つ。ちょうど、膀胱の下にあって、内部を尿道が通る胡桃の大きさほどの器官です。
泌尿器と前立腺のはたらき
泌尿器のはたらき
人間は成人で1日あたり約1.5リットル、ちょうど大きなペットボトル1本分にあたる尿を排泄します。尿がつくられる過程を簡単にみていきましょう。
まず血液中の過剰な水分や老廃物をろ過する働きをするのが腎臓です。腰よりやや上のところに背骨をはさんで左右一対あり、そら豆のような形をしています。
この腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱へと送り出されます。膀胱は、伸縮性のある袋状の臓器で、ここに尿が貯められます。健康な成人では300〜400ミリリットル、コップ1杯半から2杯程度の尿をためることができます。
膀胱にいったんためられた尿は、膀胱の収縮によって尿道からからだの外に排泄されます。
健康なときは、尿意をもよおして排尿すること以外は、ほぼ無意識のうちに蓄尿と排尿が行なわれていますが、このプロセスは自律神経の働きによって複雑にコントロールされています。
膀胱に尿がたまっている「蓄尿期」には、自律神経のうち緊張したときに働く交感神経の作用によって、膀胱がゆるみ、尿がたまるとふくらんでいきます。膀胱に尿がたまっている間は、尿道の筋肉が収縮して尿が漏れ出さないようなしくみになっています。
膀胱に尿が150ミリリットルほどたまると、尿意を感じますが、大脳の働きでしばらくは排尿を我慢することができます。
排尿しようと意識しはじめた「排尿期」には、自律神経のうちリラックスしたときに働く副交感神経が作用して膀胱が収縮し、尿道の筋肉が緩んで排尿が始まります。健康な成人の場合、1回の排尿量は300ミリリットル(コップ1杯半程度)で、30秒ほどで膀胱がからっぽになるのが普通です。
正常な尿の色は、明るい黄色。色の濃さは、水分の摂取量や運動量によって変化します。たとえば、水分をたくさんとったあとは透明に近いような薄い色ですし、激しい運動をして汗をかいたあとなどは、濃い黄色といった具合です。
ただ、紅茶ほどまでに濃い色の場合には「血尿」の可能性があります。また、尿が白くにごった場合には、腎臓や膀胱などに細菌が入り、炎症が起きている可能性があります。白い色は、細菌や細菌と闘った白血球の色です。さらに、尿がビールのような色で、泡まで黄色く見える場合には、肝臓にトラブルが発生し、黄疸を起こしている可能性もあります。
このように、尿の色も健康を知る一つの手がかりになることを知っておきたいものです。
前立腺のはたらき
さて、ここまでの泌尿器のしくみやはたらきは男女共通ですが、大きく異なるのは、男性には女性にはない「前立腺」が膀胱のすぐ下にあるということです。
前立腺は男性の生殖機能にかかわる臓器で、主な働きは、精液の15〜20%を占める前立腺液を分泌することです。前立腺液には精子を守る働きがあります。
さらに前立腺は、生殖機能だけでなく排尿のコントロールにも関係しています。くわしいはたらきについては、まだ未解明の部分も多いのですが、膀胱のすぐ下にあって、真ん中を尿道が通っている位置関係からも、排尿に影響を与えていることがわかります。
50歳をすぎた頃から、前立腺の肥大が起こる人がいます。前立腺が肥大すると、尿道が圧迫され、尿の排泄がスムーズにいかなくなったりする排尿障害の原因となります。