遺伝子のコピー数の個人差は予想以上に大きい
「コピー数多型(CNV)」と呼ばれる遺伝子コピー数の個人差が予想以上に多く存在することが、東京大学先端科学技術研究センターの油谷浩幸教授らを含めた国際チームによる研究で明らかになり、英科学誌「Nature」11月23日号で発表された。長年、遺伝子は2個で1組であると考えられてきたが、3個あることや1個しかないことも多く、これまで考えられていたよりも多数の遺伝子にこの多型が認められたという。
研究に参加したカナダ、応用ゲノミクスセンター(TCAG)(トロント)のStephen Scherer氏によると、研究チームは、ヨーロッパ人、アフリカ人、アジア人の計270人のDNAを解析し、第一世代となるヒトゲノムのコピー数多型地図(マップ)を作成。ヒトゲノムの12%を占める1,447カ所で、遺伝子が1個または3個以上存在するコピー数多型があることを突き止めた。コピー数多型の存在は2年ほど前から多数知られていたが、これは予想を超える数だという。この地図は、コピー数多型が生じやすい遺伝子を特定するのにも役立つ。
コピー数多型は、遺伝子の発現および表現型に影響を及ぼし、疾患の原因となる可能性もある。遺伝子疾患でのDNA変異を特定する従来の方法では見落とされることもあり、直接解析するほかないため、研究者はこの知見に基づいて、疾患に関与する遺伝子を再度見直す必要があるとScherer氏は述べている。
科学誌「Nature Genetics」12月号に掲載された関連研究では、政府によるヒトゲノムプロジェクトと、民間企業である米Celera Genomics(セレラゲノミックス)社によるゲノム地図を比較することで、多数のコピー数多型が新たに特定できるはずだとScherer氏らは指摘している。両団体とも独立してヒトゲノム地図を作成しており、互いを比較して不一致を探す方法は、精度が高く費用効果が見込めるとScherer氏はいう。
英オックスフォード大学生物情報科学教授のChris P. Ponting氏は、ヒトの遺伝子にみられる差異が、1文字単位の変化よりも大きな単位の変化によるところが大きいことを示した今回の知見から、このような大きな変異をさまざまな疾患と結びつけることができ、遺伝子による疾患を理解する上で重要だと述べている。