十味敗毒湯
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)はその名のとおり、桔梗・柴胡・川キュウ・茯苓(ぶくりょう)・桜皮(おうひ)・独活(どっかつ)・防風・生姜・甘草・荊芥(けいがい)という10種類の生薬から構成されています。
これは『万病回春(まんびょうかいしゅん)』という古典に記されている荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)を基本として江戸時代の漢方医、華岡青洲(はなおかせいしゅう)が 「十味敗毒散(じゅうみはいどくさん)」として創製した処方です。その後、浅田宗伯 (あさだそうはく)により、「十味敗毒湯」と改められて現在に至っています。
このように変遷を遂げてきた処方なので、現在用いられている漢方製剤の処方にも若干差異があり、桜皮の代わりに樸ソク(ぼくそく)、独活の代わりに羌活(きょうかつ) を用いたり、さらに連翹(れんぎょう)を加えて11味とする場合もあります。中国の古典処方をベースにしながらも桜皮などの日本特産の生薬を用いたりして、改善を加えて、日本独自の漢方薬として後世に残るものが、この処方以外にもいくつも創作されています。まさに、中国の文字をベースにしながらも、独自の言語として発展した日本語のように、日本人の創意工夫が漢方薬にも発揮されていると言えるわけです。
この漢方薬は発疹、発赤や化膿を伴う各種の皮膚疾患によく使用されます。 加えて、じんま疹、急性湿疹などのかゆみを伴う症状、肩こり、乳腺炎、麦粒腫(ものもらい)、流行性耳下線炎、中耳炎、外耳炎などの痛みや炎症を伴う種々の疾患にも有効な場合があります。