芍薬甘草湯
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は文字通り芍薬と甘草を1:1の比率で用いる処方です。
漢方薬はほとんどの場合3種類以上の生薬を調合するのですが、その構成要素の数が少ないほど、切れ味が鋭いと言われており、そのような切れ味を持つ薬の代表的なものがこの芍薬甘草湯です。
芍薬は単独でも筋肉や腱の異常緊張を弛緩する作用があり、甘草にも鎮静・鎮痙作用があるのでこれらを合わせることにより、急激な筋肉の痙攣による痛みを和らげます。不思議なことにこの薬は横紋筋の痙攣にも平滑筋の痙攣にも適応し手足の筋肉痛から内臓の痙攣まで幅広い効果があります。このように2種類の筋肉に同時に作用する薬は西洋薬には存在しないと言われています。
また、多くの漢方薬は患者さんの証を見極めて1週間とか2週間分が投与されるので すが、この薬は証にはほとんど依存せず、痛みに対する頓服として用いられることが多いのも特徴です。
具体的には胆石症あるいは腎臓.膀胱結石による疼痛、排尿痛、四肢の筋肉・関節 痛、こむら返り、寝ちがえ、座骨神経痛、腰痛、ギックリ腰などの種々の急性の痛み に有効ですし、痙攣を緩和することで月経困難症、痙攣性の咳き込み、気管支喘息な どにも効果を見ることがあります。特に「こむらがえり」には特効薬として名高い漢方薬です。
漢方薬というと慢性病に対してじわじわと効果のある薬であるという固定観念を多くの人は持っていますが、風邪に即効性のある葛根湯や痛みに即効性のあるこの芍薬甘草湯のような薬も少なくないのです。