漢方薬と民間薬のちがい
毎年11月23日に日本各地で盛大に“ 神農祭(しんのうさい) ”が行われますが、中国の伝説上の人物である 神農(しんのう)は、現在では“ 商売の神様 ”として、“ 薬の神様 ”として、また、“ 農業の神様 ”として祭られています。神農は一日に百草をなめて70回当たり、そこから薬の効能を発見した人といわれています。動物は病気になると本能的に野生の草を食べることがありますが、古代の人々も初めは本能的に、それから次第に経験を集めて整理して、いろいろな薬草を見つけてきたのです。
さて、一般にゲンノショウコ、センブリ、ドクダミなども 漢方薬であると勘違いされる方が多いと思われますが、漢方薬と民間薬には大きな違いがあります。その1つは、漢方薬は数種類の生薬を組み合わせて用いられます。処方は原典とされる“ 漢方の医学書 ”の基準にしたがって配合され、薬用量も規定されています。一方、民間薬の場合は、例えばゲンノショウコが下痢によく効くとか、ドクダミの生の葉のしぼり汁を患部につけると化膿がとれるなどと、昔から民間に伝承された使い方で、たいていは一種類の薬草を用いることが多いのです。
2つ目は、民間薬はひとつの病名や症状を対象に薬を使用していきますが、漢方薬の場合は「 証(しょう)」といわれるいくつかの症候群を対象にして薬を選定します。