漢方の原典
日本で使われている漢方処方は、中国の歴史の各時代に書き記された医学書を出典とするものが多くあります。たとえば、漢代の「 傷寒論(しょうかんろん)」と「 金匱要略(きんきようりゃく)」、宋代の「 和剤局方(わざいきょくほう)」、明代の「 万病回春(まんびょうかいしゅん)」などがあります。
また、江戸時代の漢方医によって作られた処方や日本で経験的に使われていた処方が今でも臨床応用されています。
有名なところでは、紀州藩の名医・華岡青洲(はなおかせいしゅう)の創方である『 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう・小太郎漢方皮膚内服薬の処方) ⇒化膿性の皮膚病に使われる 』、および『 紫雲膏(しうんこう) ⇒やけど、あかぎれ、しもやけ、痔などの症状に幅広く使われる漢方の万能軟膏 』があリ、水戸藩の軍医・原南陽(はらなんよう)も痔の漢方内服薬『 乙字湯(おつじとう・小太郎漢方ぢ内服薬の処方)』を残しています。
傷寒論、金匱要略は漢方のバイブル
現在日本で製造されている漢方エキス製剤の約半数は傷寒論・金匱要略を出典としている処方です。
今から約2000年前に 張仲景(ちょうちゅうけい)という人が、自分の一族の半数を急性の熱性病で失い、何かよい薬はないものかと各地に伝わる漢方処方を研究、編纂した書物が 傷寒論・金匱要略 です。
「傷寒論」は急性の熱病を中心にまとめたもので、「金匱要略」は慢性病及び食養を中心として著わしたものです。江戸時代の中期から後期にかけて 傷寒論・金匱要略 に基づく古方派流の漢方が日本で盛んになり、わが国で独特の発展をして現在に至っています。