漢方の診断法
現在のように血圧計、体温計、CTやMRIなどの検査機器のない時代では、医師はどのようにして治療していたのでしょうか。それは五官にたよる診察であったと思われます。
すなわち、目で視て、耳で聴き、鼻で嗅(か)ぎ、口で質問し、手で触(ふ)れて脈などを診て、病気の進行状況や症状、体質の強弱、病気の位置や性質などを総合的に判断して薬を選定していました。
このような診断法は漢方では 四診(ししん)といい?nbsp;望診(ぼうしん) ⇒(目)、 聞診(ぶんしん) ⇒(耳、鼻)、 問診(もんしん) ⇒(口)、 切診(せっしん) ⇒(手)のことを指します。
現代医学ではまず検査をして、病名がつけられ、そして治療という順序になりますが、漢方ではこのようなものがなかった時代ですから、病名を決めるというよりも病人の訴える自覚症状や他覚症状を総合的にとらえて、漢方薬を選定し治療していました。
一例としてご紹介しますと、神経症の方で、のど元から胸元にかけてつまった感じを訴えるときは、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)という薬方を服用してもらい、スッキリする場合が多くあります。このように病気らしくない病気に“ 漢方 ”が力を発揮する場面が少なくありません。