葛根湯
葛根湯(かっこんとう)は葛根8.0、大棗(たいそう)・麻黄各4.0、甘草2.0、桂皮・芍薬(しゃくやく)各3.0、生姜(しょうきょう)4.0 の比率で7種類の生薬を煎じて用いる漢方薬であり、その主成分である葛(くず)の根である葛根の名前をとっています。
この薬はおそらく漢方薬の中ではもっとも有名であり、かつ多くの人は服用した経験があるものです。一般には風邪薬として認識され、実際市販の風邪薬で葛根湯という名前をつけたものが色々あります。
また、試しにYahooで検索してみると7880件も葛根湯を扱ったページがあります。
このように有名な薬ですが、漢方医療を専門としている北里研究所東洋医学総合研究所でよく使われる処方について調査したところ葛根湯は43位であり、それほど頻繁には使われていませんでした。
その理由としては2つのことが考えられます。
まずこのような漢方専門の診療所へ来る患者さんは単なる風邪というよりは、西洋医学やその他の治療法で効果の出なかった難しい患者さんが多いということです。したがって、そのような西洋医学が苦手とする不定愁訴や自律神経失調あるいは冷え症・更年期障害といった病状に適する漢方薬が数多く処方されるということになります。
もう一つは風邪といっても漢方医学的に見れば千差万別であり葛根湯の適する病態(風邪の初期で、悪寒発熱があるが汗が出ていない状態に適します)はその一部であるということです。葛根湯は風邪以外にも種々の炎症性疾患、肩こり、神経痛などにも効果があり、とりあえず何でも葛根湯という「葛根湯医者」という言葉があるほど応用範囲は広いのですが、風邪についてはその適用範囲は限定されているわけです。
一つの薬が種々の病状に効果を示す(「異病同治」)と同時に風邪という病気一つをとっても患者さんの体質や病気の進行度により異なった漢方薬を処方する(「同病異治」)という漢方の基本的な理念が葛根湯と言う代表的な薬からもうかがえます。