五苓散
五苓散(ごれいさん)は、
猪苓(ちょれい)、沢瀉(たくしゃ)、蒼朮(そうじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮
という5種類の生薬から成り、主薬である猪苓の名前から、古くは猪苓散と呼ばれていましたが、後に五味猪苓散と称するようになり、さらにそれがつまって五苓散と名付けられました。
漢方医学的には「水毒」と呼ばれる体内の水分の異常を改善する作用があり、特に二日酔いなどに見られる脱水症状がもたらす口の渇き、頭痛、悪心、嘔吐に著効があることが多く、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)と合わせて、悪酔い・二日酔いの予防・治療薬として、密かに愛用する医師も多いそうです。
同じく、脱水症状の改善という意味で下痢による水分の排泄を抑えるという効果もあり、小児の下痢にもしばしば用いられます。
ところが、上で述べました「水毒」は水分の不足のみでなく水分の過剰も含み、したがって「水毒」の改善という意味から、五苓散には浮腫を取ったり、腎機能を改善したりする働きもあります。つまり、同じ漢方薬が体内の水分を増加させる働きも減少させる働きもあるということになります(この作用は動物実験でも確認されています)。
多くの西洋薬は、血圧を上昇させるか下降させるか、あるいは血糖値を上げるか下げるかというように、常に1方向にしか作用しないのに比べて、漢方薬の多くは体調をバランスのとれた正常な位置に持って行く作用があり、万一過剰にあるいは誤って服用しても身体に対する悪影響は西洋薬よりはるかに少ないということになります。
五苓散は漢方薬の身体へのやさしさを如実にあらわす代表的な薬であると言えます。