抑肝散
抑肝散(よくかんさん)は蒼朮(そうじゅつ)・茯苓(ぶくりょう)各4.0、川キュウ(せんきゅう)・当帰(とうき)・釣藤鈎(ちょうとうこう)各3.0、柴胡(さいこ)2.0、甘草(かんぞう)1.5の比率でこれらの生薬を煎じたものです。
抑肝散の肝とは、漢方医学における五臓の一つです。五臓とは肝、心、脾、肺、腎を意味し、それぞれに「臓」をつけると西洋医学の各臓器 になりますが、その機能的な意味は「心身一如(しんしんいちにょ)」の概念により捉えられており、実際の臓器の機能とは異なるところがあります。
たとえば肝は肝臓本来の新陳代謝や栄養補給機能に加えて精神活動の安定という働きも意味します。
抑肝散が「肝の昂り」のもたらす怒り・興奮・不眠等の精神神経症状に用いられる漢方薬であることもこれで理解できます。具体的な応用としては、不眠症、ヒステリー、顔面の痙攣、チック、歯ぎしり、更年期障害などと幅広く用いられ、さらに小児の夜泣き、ひきつけ、疳の虫にも有効です。
このように、抑肝散は鎮静剤的に使用されることも多い漢方薬ですが、西洋薬の鎮静剤とは異なり、過度の鎮静効果で眠くなることがなく、五苓散が水分のバランスを最適化するのと同様に、神経の興奮状態を適度な状態に調整する働きがあると言えます。