チョコレートで血液凝固リスクが軽減
「チョコレート中毒」の人の血小板は、血液凝固を起こしにくいという報告が、シカゴで開催された米国心臓病協会(AHA)年次集会で発表された。この知見は、米ジョンズ・ホプキンス大学(ボルチモア)医学部のDiane Becker博士らによるもの。
チョコレートにはフラボノイドと呼ばれる抗酸化物質が豊富に含まれており、これまでの研究でもダークチョコレートで同様な効果が示されているが、これは人が通常食べる量よりもはるかに多量のチョコレートでの効果で、食べてから2〜4時間以内に評価を行ったものであった。実際に人がチョコレートを食べるのに近い条件での効果は、これまでわかっていなかったという。
今回の研究の対象となった139人は、いずれも若年性冠動脈性心疾患(CHD)の家族歴がある高リスク者で、本来は血小板に対するアスピリンの作用を調べる研究に参加するはずだった。参加にあたっては、決められた運動内容を厳密にこなすほか、喫煙および血小板活性に影響を及ぼす飲食物を避けるよう指示を受け、これにはチョコレートも含まれていた。ところが、この139人は指示に反して、チョコレートを食べたことを認めた。Becker氏らは、この「違反者」たちを単に不適格とせず、血小板が凝集するのにかかる時間について、チョコレートを食べていない対照群との比較を行うことにした。
その結果、チョコレートに血液凝固を遅らせる作用がみられたという。チョコレートを食べた群では血液凝固にかかる時間が平均130秒であったのに対して、対照群では約123秒であった。血小板活性により生じる老廃物を調べた検査でも、チョコレート摂取群の尿にはこの物質の量が著明に低く、血小板活性が低いことが示された。この差は十分に有意なものであったという。
Becker氏によると、12時間前というかなり前に比較的少量食べたものが、血小板の機能に影響するという。その影響で、血液の粘りが少なくなり、血液凝固ひいては心疾患が生じにくくなる。「チョコレートは必ずしも悪いものではない」とBecker氏は述べ、高品質なチョコレートにはかなりの健康増進効果が期待できるという。結論としては、たまに高品質のチョコレートを少量食べても害にはならないということだが、大量に摂取すると、砂糖と脂肪で健康を害することになるので、注意が必要である。