簡易な作業療法が認知症に効果的
家庭生活の単純な作業を訓練する作業療法が、アルツハイマー病などの認知症患者や、その世話をする人の生活を向上させることがオランダの研究で明らかにされた。研究結果は、英医師会誌「British Medical Journal」11月18日号に掲載されている。
Nijmegen(ナイメーヘン)大学メディカルセンター(オランダ)の研究者らは、65歳以上の軽度〜中等度の認知症患者135人を2群に分け、一方のグループの患者には、経験を積んだ作業療法士による家庭での訓練を5週間にわたり10回受けてもらい、精神的衰退に対するさまざまな対処法(コーピング)を学んだ。また、患者の介護者も同時に対応法を学んだ。
療法実施6週間後と3カ月後の評価では、実施患者の75%で運動能力が改善し、82%で日常生活援助の必要性が軽減した。訓練を受けなかった患者で同様の改善が認められたのは10%のみであった。また、訓練を受けた介護者のほぼ半数が自分の役割をこなす能力が向上したと感じたが、受けなかった人では4分の1だった。
「日常生活活動の改善や介護の必要性の軽減が得られることから、作業療法は長期的にみても、社会的、医療的依存や疾患施設への収容の必要性を減らすことになる」と研究著者は述べている。
米テキサス大学医学部作業療法学助教授のElicia Dunn Cruz氏は、簡易な作業療法が初期認知症患者の助けとなることからも、「アルツハイマー病の絶望的なイメージは薄れるはずである」と指摘。今回の研究結果が、認知症患者の作業療法を保険適用外とする傾向にある健康保険会社やメディケア(高齢者対象の健康保険制度)の態度を変えさせる一助になるとしている。