運動で加齢性の眼疾患リスクが軽減
よく運動をする人は、加齢(性)黄斑変性(AMD)と呼ばれる眼疾患の重症型発症リスクが低いという報告が、医学誌「British Journal of Ophthalmology」オンライン版に10月31日掲載された。AMDは、眼球の奥にある黄斑(おうはん)の視覚細胞が機能しなくなる疾患。滲出(しんしゅつ)型と萎縮型の2種類があり、滲出型の方が失明の原因になることが多い。
米ウィスコンシン大学医学公衆衛生学部のMichael Knudtson氏らは、1988年よりBeaver Dam(ウィスコンシン州)に住む43〜86歳の男女約3,900人を対象として調査を行なった。被験者に眼科検診を実施し、運動量について尋ね、その後、5年ごとに15年間追跡した。被験者の4人に1人は、運動を取り入れた生活を続けており、ほぼ4人に1人が1日6階分以上、階段を上っており、約8人に1人が1日に12区画以上の距離を歩いていた。運動をよくする人は、運動しない人に比べ、滲出型AMDの発症リスクが70%低く、定期的に歩いている人では30%低かったという。
Knudtson氏によると、この結果は食事など他の因子による可能性もあるという。しかし、運動によって炎症が軽減することが知られており、AMDでもこの作用が働いていると考えることもできる。また、運動をよくする人は身体年齢が若い傾向があり、AMDが加齢との関係が密接であることから、この点も重要であるという。ただしKnudtson氏は、結果の解釈には慎重な姿勢で、因果関係については何ら裏付けがないとしている。
米ニュージャージー医科歯科大学眼科視覚科学研究所のMarco Zarbin博士は、運動がAMD罹患リスクそのものに影響しているのではなく、AMDのもたらす合併症リスクに影響しているとの見解だが、今回の結果が別の研究でも裏付けられれば、禁煙に次いで行動面での2番目のリスク軽減因子となり、重要な知見となると述べている。