インターネットでMRIの遠隔操作が可能に
インターネットを通じて離れた場所からMRI(磁気共鳴画像診断)装置を操作するソフトウエアについて、良好なテスト結果が得られたという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のJ. Paul Finn博士らによるこの報告は、医学誌「Radiology」11月号に掲載された。
このテストでは、Finn氏が自分のオフィスにいながらにして、半マイル(約800メートル)離れたUCLAメディカルセンターにあるMRI装置を操作して患者30人の検査を行う一方で、病院内でも技師1人が年齢を適合させた別の患者30人について検査を行った。別の放射線診断医が両方の画像を評価した結果、遠隔操作による検査画像の90%が「極めて優れている」との評価を得たが、院内で検査された画像で同等の評価を得たものは60%であった。
Siemens Medical Solutions社との共同開発によるこの技術は、単一の医療施設内での使用については米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているものの、インターネットを通しての使用については未申請であり、市場に出るまでにはもう少し時間がかかるという。この技術が完全なものとなれば、心臓や血管などの専門性の高い検査に精通した技師のいない小規模な病院などで使用できるほか、技師のトレーニングにも利用できるとFinn氏は見込んでいる。
しかし、北米放射線学会(RSNA)広報担当のEmanuel Kanal博士は、トレーニング目的の使用については価値を認めつつも、装置を遠隔地から操作されることに抵抗を示す技師が出てくる可能性を指摘。また、誰が画像を読影するのか、支払いはどちらの施設にするのかなどの問題もあると述べている。Finn氏もこのような問題が未解決であることは認めているが、この技術はCTなどにも応用でき、緊急時や戦場でのCTの遠隔操作など、さらに広い用途が考えられると期待を述べている。