大手たばこ会社のアンチ喫煙広告が10代の喫煙をあおる
大手たばこメーカー制作の、親を対象とした喫煙反対(anti-smoking)テレビコマーシャルが、子供の喫煙のきっかけとなっていることが、オーストラリアのビクトリア癌(がん)協議会(The Cancer Council Victoria)の研究によって明らかにされた。研究結果は、米医学誌「American Journal of Public Health」10月31日オンライン版に掲載された。
研究者らは、米国メディアの75市場におけるテレビ視聴率を調査し、特にたばこメーカー提供の、若者向けと親向けの喫煙反対広告の平均視聴時間に注目。さらに、1999〜2002年に米国の学校単位で行われた生徒10万人以上を対象とした調査データを見直した。
その結果、低年齢の子供では広告と喫煙行動や考え方に関連性は認められなかったが、高校生では親対象のコマーシャルを見ることで、喫煙の有害性の認識が低下し、許容度が高まり、将来の喫煙志向が高まるとともに、視聴後30日間の喫煙傾向も高かった。
研究著者らは、「たばこ会社への聞き取り調査時に、フィリップモリス若者喫煙防止プログラム責任者のCarolyn Levy氏は、プログラムの制作目的が喫煙開始年齢を18歳まで遅らせることにあったことを認めた。これは、決して喫煙しないよう働きかける公衆衛生基金のプログラムに相反する」と述べている。
同社スポークスマンのDavid Sutton氏は、今回の研究の妥当性についてコメントを避けたが、同社の現在の喫煙反対広告は、親がターゲットであることを強調。「多くの専門家が、子供にたばこを吸わせなくさせるためには両親の影響が最も大きいと指摘している」と述べている。
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)たばこ管理研究・教育センター医学教授のStanton A. Glantz氏は「こうしたプログラムは、たばこ産業の従来の活動となんら変わらない。販売促進活動の必要性から生まれたもので、実のあるたばこ規制を排除するための政治的な努力にほかならない。直ちに中止すべきである」と述べている。