関節炎の自己管理は難しい
患者自身の意識の高まりや医療費節減の目的で、疾患の自己管理(セルフケア)の風潮が高まりつつあるが、変形性関節症においては、自己管理は症状に対する患者の不安軽減には役立つが、痛みの緩和、身体機能の向上、通院回数の減少にはつながらないとする研究が、英医学誌「British Medical Journal」10月14日号に報告された。
王立 Free and University College Medical School(ロンドン)の研究者らは、股関節や膝(ひざ)の変形性関節症を有する50歳以上の患者812人を対象に、6回の関節炎自己管理プログラムを受講して患者教育書を手渡たす群と、教育パンフレットのみを手渡たす群の2つのグループに分け、比較した。被験者は、研究開始時、カ月後、1年後に質問表に答えた。
その結果、プログラム受講群では、パンフレット群のみの患者に比較して不安レベルが低下し、症状の自己管理に自信を示したものの、痛み、身体機能、通院回数に関する差はわずかだった。
この研究結果に対し、他の専門家は、研究規模の大きさは認めるものの、今後大きな進展が予測される疾患の自己管理において、十分な詳細が伝えられていないと指摘している。米テキサス A & M ヘルスサイエンスセンター薬学部教授のMary Chavez博士は、自己管理プログラム受講者の多くはすべてのセッションに参加しておらず、比較成績の有効性に疑問が残るという。また、患者らが使用した鎮痛薬もすべてが明らかにされてはいない。
米ベス・イスラエル医療センター(ボストン)栄養医学研究センター助教授のDaniel S. Rooks氏は「今回の大規模研究の結果は、クラス(グループ)単位での教育と、焦点を絞った患者情報提供が関節炎患者にある程度効果的だとする米英両国のいくつかの研究と合致する内容だ。患者の自己管理能力の開発は、研究を続行する価値のある分野だ」と述べている。