毛髪で摂食障害を診断
摂食障害は、患者が自覚していなかったり、隠そうとしたりすることが多いため診断が難しいが、毛髪に含まれる炭素と窒素から拒食症や過食症を判定する新しい検査法が開発され、質量分析専門誌「Rapid Communications in Mass Spectrometry」オンライン版に10月17日に掲載された。
米国立衛生研究所(NIH)によると、摂食障害をもつ人の90%以上は12〜25歳の女性が占めているが、中高齢の男女にも摂食障害が増加する傾向がみられるという。適切な治療をしないと、栄養不良、心臓障害など、命にかかわる合併症を来す可能性がある。
研究を率いた米ブリガム・ヤング大学(BYU、ユタ州)大学統合生物学助教授のKent Hatch氏によると、毛髪からその人の食生活や栄養状態がわかるという。髪の成長は、新しい蛋白(たんぱく)が毛髪の基部に追加され、毛包から毛髪が押し出される形で進む。この蛋白は食習慣による影響を受けるため、毛髪1本1本が日々の栄養を記録する化学的な「日記」となる。
今回の検査法では、毛髪の炭素および窒素の組成を解析することにより、摂食障害を診断でき、拒食症であるか過食症であるかについても80%の精度で判定できるとのこと。検出力は極めて高く、毛髪5本で検査が可能である。
医療現場での実用化にはさらに精度を上げる必要があるが、将来的には診断だけではなく、患者の回復を監視するツールとしても利用できるとHatch氏は述べている。現時点で、この検査法によって、摂食障害ではないが菜食主義を実践する人を検出することも可能だという。ただし、この検査法は補助的に用いるには有用だが、単独で診断に用いる段階には達していないという専門家の意見もある。