iPodの音量に注意あれ
人気の高いiPodなどのMP3プレーヤーを最大音量で1日5分聴くと、聴覚に回復不能な障害を与えることが、米ボストン小児病院(ボストン)診断聴覚学プログラム責任者のBrian J. Fligor氏らの研究で明らかになった。また同氏らの別の研究では、周囲が騒がしいと、人は安全域を超えたレベルにまで音量上げる傾向にあることが指摘されている。米ケンタッキー州で開かれた「Noise-Induced Hearing Loss in Children at Work and Play」会議で報告された。
Fligor氏は、米コロラド大学のCory Portnuff氏らとともに、iPod、iPod Nano、Sandisk Sansaなど5機種のMP3プレーヤーの音量を、イヤホン式ヘッドホン、周囲の騒音を遮断する「アイソレーター」ヘッドホン、耳の上から装着する「耳載せ式」ヘッドホンを用いて測定した。
Fligor氏らは、個人により音量の許容差があることを考慮した上で、ほとんどの人が最大音量の70%で1日4.6時間聴くことが可能と結論付けた。聴覚の許容範囲は、80%の音量では1日1.2時間までで、最大音量になると、イヤホン式で5分以内、ノイズリダクションイヤホンで3分、耳載せ式で18分以内としている
もう一方の研究では、Fligor氏は、米PCO School of Audiology(ペンシルバニア州)助教授のTerri E. Ives氏らとともに、博士課程の学生を対象に、2種類の条件下(騒がしい環境、イヤホンの種類)で音量をどのように調節するか調査した。
男性は総じて女性より高い音量に設定する傾向にあったが、全体的には、静かな環境で「危険」レベル(85デシベル以上)に設定したのはわずか6%だった。騒音のある環境では、ノイズリダクション式イヤホンの学生は、一般的なイヤホンの学生より低い音量に設定した。ノイズリダクション機能のないイヤホンの被験者では、80%が危険レベルに設定したが、機能つきの被験者では20%と少なかった。
このことからも、周囲の騒音の規模が、人に高音量を選択させるかどうかの第一の判断基準となることが示唆されるが、Fligor氏は「聴覚障害を避ける意味でも、ノイズリダクション機能のあるイヤホンは、投資の価値がある」と述べている。