スタチンに喫煙者の肺機能維持効果
米国では何百万人もの患者がコレステロール降下薬のスタチン系薬剤を使用しているが、そのスタチンが喫煙者や元喫煙者の肺によい作用をもたらし、また重度の頸動脈閉塞への効用もあることがわかった。この2研究は、ニューオーリンズで開催された米国胸部疾患学会(ACCP)年次集会で発表された。
肺機能への効用を示したのは、米オクラホマ大学メディカルセンターのWallid G. Younis博士らによる研究。喫煙者182人および元喫煙者303人を対象に、FEV1(1秒間に呼出できる呼気量)を測定し、肺機能に対するスタチンの効果を比較した。被験者のうち肺機能が正常だったのは67人のみであった。
スタチン使用群の238人は、平均2.7年の追跡期間中にFEV1が2.5%の低下したのに対して、スタチン未使用群では同期間で平均12.8%の低下がみられた。さらに、閉塞性肺疾患をもつ患者の呼吸器系の原因による救急外来受診回数および入院数が、スタチンによる治療後、有意に減少した。この効果は、喫煙者、元喫煙者のいずれでも同程度であった。Younis氏は、スタチン治療により肺疾患の進行を遅らせることができる可能性があるが、裏付けにはさらに研究が必要と述べている。また、肺癌には効果がないため、禁煙への意欲は捨てないようにとも指摘している。
もう一方の研究は、米ニューヨーク大学医学部のGautham Ravipati博士らによるもので、片側ないし両側に重度の頸動脈狭窄がある患者449人が対象。スタチン治療を受けた298人では、平均26カ月の追跡期間中に脳卒中ないし心臓発作を発症または死亡した患者がわずか15%であったのに対して、スタチンを使用しなかった151人では平均21カ月間で68%であった。
Ravipati氏は、この結果は、頸動脈疾患と高コレステロール血症をもつ患者は常にスタチン治療を受けるべきという説を後押しするものだと述べている。また、最も驚いたことは、高コレステロール血症患者に対するスタチン系薬剤の利用が不十分である点で、コレステロールが正常とされる値であっても、脳卒中リスクの高い患者は、さらにコレステロールを低下させる必要があるとRpvipati氏は指摘している。