丹参(たんじん)の降圧メカニズムを解明
丹参(たんじん、danshen)と呼ばれる中国の薬草(生薬)が、新しい高血圧治療の一つとして期待のもてる可能性が、米医学誌「American Journal of Physiology - Heart and Circulatory Physiology」1月18日付オンライン版掲載(全文は近号に掲載予定)のハムスターの研究で明らかなった。セージの一種(シソ科サルビア属)である丹参の根は、古来中国では、心臓障害や高血圧症の治療薬として用いられている。
研究著者で、米ニュージャージー医科歯科大学薬理学・生理学部助教授のDavid D. Kim氏は、伝統的に丹参が高血圧に有効であることは知られていたが、そのメカニズムは不明だったという。同氏は、高血圧症患者に丹参を処方しており、「特にアテローム性動脈硬化症や狭心症を有する高血圧患者での効果が非常によい」と述べている。
研究者らは、丹参の有効成分であるタンシノンUAを高血圧ハムスターに投与。同成分に降圧効果と、血管拡張作用のあることが明らかになった。体内の一酸化窒素(NO)産生を促進させることで効果が現れるとみられている。今回の研究は、高血圧治療薬としての丹参の可能性を探る上で基盤となる。
米メリーランド州立大学家庭・地域医学準教授のLixing Lao氏は「安全性の評価のために、薬物毒性や有害作用に対するさらなる研究が必要である」と述べるとともに、抗凝固薬を使用中の患者では注意が必要であると指摘する。
Kim氏は「服薬中止後の効果持続時間の検討が次の研究課題となる。西洋薬は迅速な効果が得られるものの持続時間が短い。生薬はその逆だ」としている。