甲状腺結節を超音波で破壊する新治療法
甲状腺にできたしこり(結節)を強い集束超音波で破壊・除去するという、フランスで開発された新技術の有効性が、ヒトを対象とする初めての試験で示された。外科手術の回避につながると期待されるこの治療法の成果は、フェニックス(アリゾナ州)で開催された米国甲状腺学会(ATA)年次集会で報告された。
甲状腺結節はかなりよくみられる疾患で、気付かれないものも多く、癌性のものはわずか5%にすぎないという。しかし、甲状腺は首の付け根に位置するため、結節が大きくなると呼吸を妨げることがある。また、結節によって甲状腺ホルモンの産生が過剰になり、体重低下や異常心拍などの症状を引き起こすこともある。
Saint-Louis病院(パリ)の内分泌外科医Oliver Esnault博士らによる今回の研究は、この治療法への患者の反応をみるのが主な目的。複数の結節がある肥大した甲状腺をもち、摘出手術が予定されている患者25人を対象として行なわれた。1人につき1結節のみを標的として強い集束超音波の照射を行い、2週間後に外科手術を実施。被験者の3人は恐怖心を強く示したため処置が中止されたが、残りの患者は耐えることができた。最も高いレベルの集束超音波を用いた場合、結節組織の70%が破壊され、この治療法の実用化への可能性と安全性が裏付けられたという。
この研究はフランス国立保健・医学研究所(INSERM)の助成によるもので、INSERMが装置の原型を設計し、協力企業が製造を請け負った。Esnault氏らは現在、超音波治療に最も適する患者を判定するための2研究を開始しており、その一つは、結節から甲状腺ホルモンが過剰分泌される患者を対象としたものだという。この技術の実用化には、3〜4年かかる見込みとのこと。
今回の試験は小規模なもので、どの程度の患者に適用できるかも不明だが、超音波により周辺組織を損傷せずに結節を縮小できることを示した点で重要だと、ATAの専門家は評価している。