出血を瞬時に止めるゲル
創傷部を覆い即座に出血を止める透明ゲル状の物質が、米マサチューセッツ工科大学(MIT)および香港大学の研究グループにより開発中だという。これまでにも圧迫法、焼灼(しゃく)法をはじめ、血液凝固促進剤や強力接着剤の成分の使用など、さまざまな止血法が考案されてきているが、出血は依然として外科手術での大きな難題である。実際、手術時間の半分は出血の制御に費やされているという。
MITのEllis-Behnke氏らは、脳での部分的な断絶を再結合する方法を研究している際に、偶然このゲルにより出血が止まることを突き止めた。このゲルを用いてハムスターの脳、肝臓、脊髄、筋および大腿動脈の傷を処置したところ、15秒以内に出血が止まることがわかった。止血の機序は不明だが、ゲルが血液を凝固させているわけではなく、物理的な壁を形成すると考えられるという。
Ellis-Behnke氏によると、このゲルが外科手術に利用できれば、手術時間も輸血量も大幅に削減できるという。また、切断された四肢の出血を減らし再接合までの保存にも利用できる可能性がある。現段階ではハムスターを用いた研究にとどまっているが、このゲルをヒトに利用できれば大きな進歩となるはずだという。次のステップは、ブタのような大きな動物で試験を行うことで、製品化までには3〜5年を要する見込み。費用はそれほど高価にはならないと予想されている。
米ジョージワシントン大学(ワシントンD.C.)傷害予防管理センターのMary Pat Mckay博士は、このゲルを創傷に使用した場合の長期的な影響については不明だが、ほかの治療法が効かない患者や、大量の輸血が必要な患者にとっては有用なものとなるはずだと述べている。