心臓の健康にはオリーブ油よりもクルミがよいかも
健康によいとされる地中海料理に用いられるオリーブ油よりも、クルミのほうが心臓の健康には有益である可能性を示唆するスペインの研究が、米国心臓学会(ACC)発行の「Journal of the American College of Cardiology」10月17日号に掲載された。
Hospital Clinico(バルセロナ)脂質クリニック責任者のEmilio Ros博士ら研究では、成人被験者24人にサラミとチーズの精白パンサンドウィッチと高脂肪ヨーグルトを食べてもらい、食後デザートとして、半数にオリーブ油をティースプーン5杯、他の半数にはクルミ40g(殻つきで8個)を摂取してもらった。
その後の超音波検査で、高脂肪食後の動脈の柔軟性と弾力性が、クルミ群でオリーブ油群より良いことが明らかになった。被験者の血中コレステロール値は、「健康〜中程度に高い」の範囲でさまざまなレベルだった。
Ros博士によると、オリーブ油とクルミの双方とも、高脂肪食後の動脈の炎症や酸化の発生を軽減させたが、クルミはさらに血管の柔軟性にも有益性を発揮した。この効果はオリーブ油では認められなかった。同博士は、これら有益性は、クルミに多く含有されるα(アルファ)-リノレン酸によるものだという。α-リノレン酸の栄養素は、魚に含まれるオメガ-3脂肪酸と類似している。
米国心臓協会(AHA)などの専門機関は国民に対し、オメガ-3脂肪酸を豊富に含有する脂肪性の魚を少なくとも週2食摂取するよう勧めている。しかしRos博士は、この奨励の唯一の問題点は、(米国などでは)魚がクルミほど容易に購入・摂取できないことだという。
一方、米メリーランド大学医学教授のRobert A. Vogel博士は、同誌レビューで、「今回の研究報告は、クルミに含まれる保護作用を有する脂肪が、高飽和脂肪食の悪影響を解消する効果のあることを示している。オリーブ油などの中性脂肪には、同様の保護効果はない」と述べるとともに、「クルミの保護効果が過熱・調理によって得られるのか、あるいは生で摂取するのが最良か否かを明らかにする研究が必要」としている。