癌(がん)転移はスイッチ切り替え機構による
悪性の癌(がん)細胞が、体の他の部位に移動(転移)して新たな腫瘍形成を可能にするための「切り替えスイッチ」をもつことが明らかにされ、米国科学アカデミー発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)」9月18日号に掲載された。
癌細胞では遺伝子の変異が起こっており、その変異により静止状態の上皮細胞が移動性の間葉細胞に恒久的に変化するものとこれまで考えられていた。しかし新しい研究によると、悪性度の高い癌細胞は、上皮細胞と間葉細胞の両方の性質を兼ね備え、必要に応じてそれぞれの状態の間を移り変わることができるという。研究チームの1人、米デューク大学(ノースカロライナ州)のMariano Garcia-Blanco氏は、このスイッチを理解することにより、最終的には癌の最も恐ろしい特質である細胞の転移を食い止める方法に行き着くと期待している。
今回の研究は、ラットの癌細胞に「蛍光レポーター(細胞が上皮細胞に変わると光を発し、間葉細胞の状態に戻ると休止する蛋白)」を移植して観察したもの。この結果、腫瘍の性質は極めて複雑であり、その働きが変化するために必ずしも遺伝子の変異は必要ないことが明らかになったという。この知見は、癌の転移を止める新しい治療法につながる可能性をもつという。