骨粗鬆(しょう)症による骨折リスクを予測する新しい計算式
身体障害や死亡の原因となることも多い高齢女性の骨折のリスクを予測する計算式を、オーストラリアの研究グループが開発した。この計算式で求められる「Fracture Risk(略してFRISK)」と呼ばれるスコアは、骨密度をはじめとするさまざまな危険因子を考慮したもので、医師が女性の骨折の予防対策を立てる上で利用できるものだという。
医学誌「Radiology」10月号に掲載されたこの計算式は、脊椎および大腿骨頸部の骨密度、過去の骨折回数、体重および前年の転倒回数による「転倒スコア」を組み合わせたもの。脊椎と大腿骨頸部の骨密度の測定は一般的に行われており、そのデータを利用できる。過去の骨折および転倒の回数は自己申告によるもので、体重も簡単に測定できる。
現在、骨折リスクの評価には、部位別(一般に脊椎および股関節部)のTスコア(若年女性グループとの骨密度の比較)およびZスコア(同年代女性との比較)が利用されているが、異なる部位ごとのリスクを総合して個人としてのリスクを算出する方法がこれまではなかった。
今回、メルボルン大学のMargaret Joy Henry氏らは、過去2年間に骨折経験のある女性231人(平均74歳)および骨折経験のない女性448人(平均72歳)の骨密度を測定し、これに基づいて計算式を開発した。精度を検証するため、別の女性600人(平均74歳)を対象にこの計算式を試み、6年間追跡した。その結果、この式により骨折の75%を予測することができたという。過去の研究から、高齢女性では体重の軽い方が骨折リスクが高いとされていたが、今回の研究では、体重が重い方が転倒時に骨格にかかる力が大きいため、骨折リスクも高いことがわかった。
FRISKは0〜10点のスコアで判定し、5.4点以上になると骨折が予想され、スコアが1点上がるごとに、骨折の確率が75%上昇するという。骨折を事前に予測しようとする取り組みが世界的に行われていることから、この新しい計算式は専門家の間でも評価されている。しかし、FRISKスコアは極めて単純化された方法であり、完全なものとはいえないという意見もあり、世界保健機関(WHO)は、さらに優れた予測方法の開発を進めているという。