睡眠時無呼吸治療に新兵器
小さなポリエステルの棒を軟口蓋(こうがい)に挿入する侵襲性の低い外科的措置が、閉塞性睡眠時無呼吸の治療として長期的に有効であることが明らかになった。睡眠時無呼吸は、米国では少なくとも1,200万人が罹患しており、最もよくみられるのは閉塞性だという。睡眠中、1時間に20〜30回、呼吸停止または呼吸の極めて浅い状態が10〜20秒続く。
米Hinsdaleメディカルセンター(イリノイ州)のRegina P. Walker教授らは、軽度から中等度の睡眠時無呼吸を示す中年の男性16人、女性6人の計22人を対象に、「ピラー・プロシージャー(Pillar procedure)」と呼ばれる治療法を実施した。90日後、17例でいびきの程度、日中の眠気、低呼吸指数に著しい改善がみられ、15カ月後もこの効果が持続していたという。この研究は、先ごろカナダ、トロントで開催された米国耳鼻咽喉頭部外科学会(AAO-HNS)年次集会で発表された。
6年前ほど前までは、睡眠時無呼吸の治療法には持続陽圧呼吸(CPAP)療法および侵襲性の高い外科手術の2種類しかなく、CPAPは使用の遵守(コンプライアンズ)の面で、外科手術は効果の持続の面で欠点があった。ピラー・プロシージャーは、局所麻酔により最小限の痛みで処置ができ、すぐに普段どおりの生活に戻れるほか、1〜2週間で異物感も消える。効果は挿入した棒自体によるものではなく、棒の周囲に形成される瘢痕組織によるもので、時間が経つほど高い効果を発するという。この方法は、他の治療法と併用できるという利点もある。
ピラー・プロシージャーの費用は約1,500ドル(約17万円)。新しい処置であるため、米国の場合、保険が適用されるケースは約25〜30%だが、適用例は徐々に増えてきているという。重度の患者にこの処置を用いる医師もいるが、重症例での有用性についてはまだ十分に研究されていないとWalker氏は指摘している。