腎細胞のニコチン受容体を発見
腎細胞にニコチン受容体があることが初めて確認され、米サンアントニオ(テキサス州)で開催された米国心臓協会(AHA)秋季高血圧研究年次集会で発表された。研究を行った米マイアミ大学医学部助教授Edgar A. Jaimes博士によると、腎疾患患者で喫煙する人は、喫煙しない患者に比べ予後が悪いことを示す臨床的な証拠が多くあり、今回の研究で、その理由として考えられるメカニズムの一つが突き止められたという。
腎臓は、体内の水分および電解質(カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび硫酸塩など)の排出と再吸収の調節を担う臓器である。腎臓がこれらの物質を排出できなくなると、体液および血液の量が増大し、血液中に老廃物が蓄積して体調が悪くなる。高血圧の原因として最もよくみられるのが腎疾患であり、腎臓が体液の塩分濃度を調節しているため、わずかでも腎機能が障害されると血圧に影響が及ぶ。腎疾患が悪化すると腎不全に至り、人工透析または腎移植が必要になる。
Jaimes氏および米マイアミ退役軍人メディカルセンターの研究チームは、腎細胞でニコチン受容体を探し、その存在を突き止めた。この受容体の存在は、これまで一度も報告されたことがないという。受容体が見つかったのは、腎臓の濾(ろ)過装置にあたる糸球体にみられるメサンギウム細胞。腎疾患になると、この細胞が活性化され、腎臓の瘢痕化の原因となるコラーゲンやフィブロネクチンが作られるという。
研究チームが、培養腎細胞に平均的な喫煙に相当する濃度のニコチンを添加したところ、同じ現象がみられた。メサンギウム細胞の増殖が50〜80%、フィブロネクチン産生が50%増大し、ニコチン受容体を阻害する化合物を添加すると、この作用は減少した。
Jaimes氏は、「この損傷は、喫煙によるほかのあらゆる打撃の上に生じる、さらなる打撃」と述べ、今回の知見は腎疾患を治療する医師が実際に応用できるもので、「腎疾患患者にとって重要なのは、禁煙も治療の一部だという点」と指摘している。