歯科充填(てん)材アマルガムの安全性否認の勧告
米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は、水銀を含有するアマルガム歯科充填(てん)材を安全であるとする政府の報告書に対し、2度の投票の結果いずれも13対7で、認められないとの結論に達したとAP通信が報じた。FDAは諮問委員会の勧告に従うことを強制されるものではないが、通常は従うことが多い。
アマルガムには、銀、銅、錫(スズ)、亜鉛などと結合する形で約50%の水銀が含まれている。歯科専門家は、他の金属と結合した水銀は健康に害を及ぼさないとしているが、消費者団体は、水銀が水銀蒸気(ガス)の形で漏れ出し、血液中に入り込むとしている。米国歯科医師会(ADA)によると、アマルガムの使用は減少傾向にあり、代用として樹脂複合材が用いられているという。カナダ、ノルウェー、スウェーデン、英国、ドイツ、デンマークなどの各国では現在、水銀を含む充填材の妊婦への使用を避けるよう歯科医に勧告している。
しかしADAは、この勧告は健康被害や毒性作用に関する科学的根拠がないまま出されたものであり、アマルガムは有用な選択肢の一つであるとしている。米国医師会誌「JAMA」4月19日号に掲載された2研究では、アマルガムを使用した小児と複合材を使用した小児との間にIQ、記憶力、注意力、腎機能などの差は認められなかった。充填材にかかる圧力が大きい奥歯などの治療には、アマルガムが他の充填材よりも優れているという意見もある。
AP通信によると、FDA当局は諮問委員会に対し、内部機関による最近の34研究のメタ分析結果についても慎重な審査を求めたという。この審査では、アマルガム充填材に害はないとするFDAの結論を覆すような有意な情報は認められなかったが、委員会の顧問の一人はAP通信に対し、この審査は不十分なものであったと述べている。
9月5日には、複数の団体が妊婦への水銀充填材の使用を直ちに禁止することを求める嘆願書をFDAに提出した。FDAの回答期間は6カ月。しかし、アマルガム充填材の使用を禁止すれば治療コストが上がり、虫歯治療を受ける人の減少につながり、ひいては米国人の口腔衛生に害が及ぶことになるので、アマルガムを禁止すべきではないという専門家の声もある。