子供の肥満との戦いはスローな展開
米国では子供の肥満が急増しており、多くの対策プログラムが組まれているが、その効果の程は定かではないという米国医学研究所(IOM)による報告書「Progress in Preventing Childhood Obesity: How Do We Measure Up?」が発表された。
米国での青少年の肥満率は驚くべき速度で増加しており、子供の3分の1が肥満だという。2002年には、子供とティーンエージャーでの肥満は16%だったのが、2004年には17.1%になり、2010年までには20%になると考えられている。肥満は糖尿病、心疾患、脳卒中、胆嚢疾患、骨関節炎、ある種の癌(がん)などさまざまな疾患の原因となる。
肥満対策としては、よりよい栄養摂取や学校での運動を奨励する政府主導のプログラムがいくつかあり、多くの地域でも歩道や自転車用道路を作り、運動を奨励している。肥満問題への国民の認識も増してきた。しかし、これらの対策の効果が現れるには何年間もの継続した努力や評価活動、情報供給が必要とIOM報告書は述べている。
報告書は、政府、州、地域行政が効果的なプログラム評価のリーダーシップをとり、食品製造業者は健康的な製品の開発と適切な量を監視し、健康的な生活様式のための一貫した情報を消費者に伝えるべきとしている。各地域は、成功した対策プログラムを他の地域と分かち合い、学校では体育の必須科目を増やし、家庭では、健康的な食事、間食、飲料を適切量供し、運動を優先することが望まれている。
子供の肥満問題は1つのセクターだけで解決できるものではなく、関連するセクターが連帯責任を負うべきものであることも指摘されている。米エール大学(コネチカット州)医学部予防研究センターのDavid L. Katz博士も、「カロリーの詰まったファストフード、人を惑わす宣伝、労力を節約する科学技術など、われわれの生活は肥満をもたらす因子に日々襲われている。1つの因子が肥満をもたらすのでもなく、1つのプログラムでこれを解決できるわけでもない」と述べている。